レイシャルメモリー後刻
第12話 寝ても覚めても 6


「おはようございます」
「リディアは奥かね?」
 そう言って通り過ぎようとするシェダ様を引き留める。
「今着替えています。待ってください」
「私の娘なのだから、いいじゃないか」
 あ、思い出した、抑止力だ。この場合はちょっと種類が違うけれど、俺の抑止力が必要だろう。あんたが止まれ。
「や、よくないですって」
「お父様、勝手に入ったら怒ります!」
 奥の部屋から声だけが返ってきた。目一杯隠したつもりだろうけれど、ちょっとシュンとしたのが分かる。俺が必ず幸せにするから何も心配はいらないと分かってもらえれば、リディアが呆れるほど来なくてすむと思うのだが。
「ここで待たせてもらうよ」
 シェダ様がこっちを向いた。思わず身構えそうになる。安心してもらおうと心の中で復唱した。
「男か女か、どっちがいいと思う?」
 シェダ様はニコニコした顔で、いきなりそう切り出す。
「は? いえ、別にどちらでも」
「表情がきつくなるとか、腹が尖って見えたりすると男らしいぞ」
 そうなんですか、と感心した振りをしながら、どこをどう見ればリディアの表情がきつく見えるのか、腹が尖って見えるのか、有り得ないんじゃないかと思う。
「私は女の子がいいと思うんだ」
 そう言うとシェダ様はニヤッと笑った。やっぱり根に持っている。これは一生続くのだろうと思いながら、妬みみたいなモノは甘んじて全部受け止めようと思う。
「そう言っていただけると嬉しいです。まわりはどうしても男の子を望みがちですから」
「そりゃあ、男の子も産んで欲しいがね」
 男の子と口にしても、シェダ様の幸せそうな表情は変わらない。俺に対して同じ気持ちを味わえと思っているのとは、違う笑顔な気がするが。
「リディアの子供だ、男でも女でも可愛いだろうねぇ」
 あ、そうか。シェダ様は親バカなんてとっくに通り越しているのだ。すでに、孫のことで頭がいっぱいなのだろう。
 子供の存在に目が向いている間くらいは、自由になれる。なんてことを思ったら、子供が可哀相だろうか。でも、子供ほど勝手気ままな行動を許される存在もない。もしかしてシェダ様とでも、いい勝負をしてくれるかもしれない。
「こういう環境にいると大変だろうが、子供は自由奔放に育てるのが一番だと思うよ」
「できる限り、そうするつもりです」
 俺は力を込めてそう返し、シェダ様に満面の笑みを向けた。

☆おしまい☆

※ちぇこま。さまのリクエストで書かせていただきました。ありがとうございました。m(_ _)m

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