ドラゴン
そのドラゴンは首を空に向けると、大きく開いた口から海さえ波立つような咆哮を上げた。 背の翼を思いっきり広げて数度羽ばたき、身体を宙に浮かせる。 そして、まわりの空気を吸い切るように肺に空気を溜め、一気に放出した。 その空気は赤い炎となって噴射され、チリッとタバコの先をかすめる。 「いい子だ」 俺はタバコの煙を大きく吸い込むと、小さな頭のゴツゴツした鱗を、指先で撫でてやった。
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