入れ替わった日常


その瞬間、視界が一転した。
眼前には目を見開いた自分の顔がある。
抱きしめていたはずの相手が、今は自分を抱きしめていた。

「入れ替わっちゃってる?!」
「ホントだ?!」

見つめ合ったまま途方に暮れる。
こんなことになっても抱きしめていてくれるのが、とても嬉しい。
離れてしまったら不安も増すに違いない。

「……なぁ」
「え?」
「このままで、いんじゃね?」

なんだその即断即決は。
と思ってから、そういやそうかと考え直す。
悩むことはない、そのままで生きていけばいいだけのことだ。

「どうせ宿無し、問題無いか」

そう言うと、目の前の顔が笑い出した。

「あるだろ。背中に」

ひとしきり笑うと2匹のカタツムリはそれぞれの方向へと進んでいった。

☆おしまい☆


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