レイシャルメモリー後刻
第10話 以心伝心愛情愛護 9


「本当に。できることなら男児をご出産いただければ」
 思わず口にした言葉に、アルトスが冷ややかに目を細める。
「そんな話題は、まだ早い」
 確かにその通りかもしれないが、ライザナルとしては一大事なのだ。気持ちは落ち着かない。ジェイストークが思わず視線を向けると、フォースは苦笑する。
「そんなのどっちでも」
「健康であれば?」
「それもどうでも」
「レイクス様?!」
 何を言い出すのかと、ジェイストークは思わず声を大きくした。フォースは、静かに、と口に人差し指を当てて、少し恥ずかしげに笑う。
「リディアが無事でいてくれれば、それだけでいい。俺にできるのは、どんな子供だろうと、全力で守ることだけだ」
 そう言うと、フォースは伸びをしながら大きなあくびをしている。ジェイストークはあっけにとられてフォースを見ていた。
「そろそろ行くぞ」
 アルトスに肩を叩かれ、ハッとする。
「あ、それでは私はこれで」
 礼をして頭を上げると、フォースは立ち上がって二人に手を振っていた。
「ありがとう。リディアの様子を見てから寝るよ。じゃあ」
 フォースが奥のドアからリディアの寝室へ入っていくのを見ながら、ジェイストークは部屋を出てドアを閉めた。歩き出しているアルトスに走り寄り、隣に並ぶ。
 健康なら男でも女でもいい。世間ではそれが常套句だ。フォースもそう言うとばかり思っていたが、そうではなかった。
「感動したようだな」
 茶化すつもりで言ったのかもしれなかったが、アルトスも理解しているらしいことが、ジェイストークには嬉しかった。
「ああ、感動したよ。陛下に一字一句お伝えしたいくらいだ」
「ガキだと思っていたが、なかなかしっかり大人なのかもしれないな、一部は」
 一部か、と思いながら、ジェイストークは思わず乾いた笑い声を立てた。アルトスもフッと息で笑う。
「守るというのは、そういうことか。だからこそリディア様が、許容と口にされた」
 アルトスにはリディアの言葉が忘れられないのだろう。そしてその言葉は、フォースがリディアを守り通しているからこそなのだ。
 そして、まだ小さいとはいえ、リディアの中で育っている命も、すでにフォースに守られている。
「早く陛下に報告したいものだな」
 アルトスが笑みを含んだ声で言う。
「本当に」
 クロフォードが喜ぶ姿が目に浮かび、ジェイストークは穏やかに微笑んだ。

☆おしまい☆

※匿名希望さまのリクエストで書かせていただきました。ありがとうございました。m(_ _)m

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