レイシャルメモリー後刻
第13話 その輝きは永遠に 11
「少しだけ話しをさせてください。色恋沙汰は無理でも、妖精のことなら知ってるかもと思って」
「そうか。そうだね」
うなずきあう二人に、フォースが訝しげに眉を寄せる。
「どういう事だ?」
「教えて欲しいんだ、妖精のこと」
「妖精の何を?」
そうたずねられ、グレイは思わず言葉に詰まり、それから無理やり口を開く。
「女の子の、……、れ、恋愛感情について?」
思わず言葉に冷めた笑いが混ざった。
「無理って分かっていて聞くなよ」
フォースの苦笑を見て、グレイはタスリルと顔を合わせてため息をつく。
「俺、嫌われたいんだよね」
「妖精の恋愛感情って言われても。ティオならともかく、女の子だなん……、あ」
言葉を切ったフォースを、タスリルがのぞき込む。
「何か思い出したかい?」
「そういや、ティオは今リーシャって娘と一緒にいるんだけど、リーシャ……、だけじゃなく、妖精はみんな人間の変化を嫌うって言ってたな」
グレイは、変化、と口の中で繰り返した。フォースはうなずくと言葉をつなぐ。
「俺とリディアのことも、知り合ってほんの数年で子供まで作るなんて信じられないとか言ってるらしいし。その数年が、どれだけ長かったと思ってるんだ」
幾分力がこもった言葉に、タスリルがクックとノドの奥で笑っている。フォースはタスリルをチラッと横目で見て、グレイに視線を戻した。
「他の奴らもだけど、とにかく性急なのは苦手らしい。他は……、何か思い出したらでいいか?」
「ああ。ありがとう。とっかかりにはなるだろうし、どうにかできそうな気がするよ」
無理に笑みを浮かべたグレイに、フォースは真剣な顔を向けてくる。
「悩んでるならサッサと言ってくれ。なにか思いつけるかもしれないのに」
「いや、いくらなんでも、わずらわしいかと思っ……、それだ!」
グレイは思わず叫び声を上げた。その声の大きさに、フォースは目を丸くして身を引いている。
「な、何が?」
「いや、納得させて突き放す台詞が見つかったんだよ!」
そう言うと、グレイはフォースの手を取って、もう片方の手でポンポンと肩を叩く。
「ありがとう。さっそく試してくるよ」
キョトンとしているフォースとタスリルを残し、グレイは神殿の懺悔室へと急いだ。
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