レイシャルメモリー後刻
第11話 煮ても焼いても鴨の雛 14
「そういえばあの城、レイクス様を裏切ろうなんて思ったら、出るかもしれないってジェイさんが言ってましたよ」
「は? 出るって幽霊か?」
そうです、とケティカがうなずいた。
「詳しくは聞いていないのですけど、レイクス様と元の持ち主さんの間で、恩があったり無かったりするって」
「無いんじゃ関係ないだろう」
「微妙な関係って言いたかったんです。察してください」
へぇ、と返事をすると、ケティカはニッコリ微笑んだ。ちょこちょこと駆け出し、並んでいる窓の一つ一つから、順に外を眺める。
ケティカは、ウィンが謀反を起こしそうな奴を集めると言ったことを気にかけ、フォースを殺そうとしているのではと心配しているのだろう。だが、ウィンの気持ちはケティカの想像と違っていた。
今のウィンになら、謀反を起こしそうな奴を集められ、行動も動向も楽に探れる。集めておけば楽に監視できるのだ。だが、ただ役に立とうとも思っていなかった。もしフォースが圧政をひくようなことがあったら、かなわないと分かっていても、本気で対峙してやろうと思う。フォースなら、それで何か感じてくれるはずだ。
「あ、ウィンさん、あれ、レイクス様ですよ!」
その指差した先に、リディアを連れたフォースの後ろ姿があった。
「こら」
不意に窓を開けようとしたケティカを、止めに入る。
「なんでも触るな」
「でも、ご挨拶したいです」
「相手が相手だから別にいいんだが、窓から手を振るのは失礼だぞ?」
「あ! そうですね」
もう少し行ったら出入り口だ。ケティカは半分駆け足で外に出ると、振り返ってウィンを待っている。フォースの方へ視線を移したケティカが、赤くした頬を手で覆った。
「なんだ、やっぱり惚れてるのか」
「違いますよぉ」
そう返しながら、ケティカの視線は動かない。その視線を追ってウィンは納得した。なんのことはない、二人がキスしているのを見ていたのだ。
「素敵ですよねぇ」
力の抜けた笑みを浮かべているケティカの横を、ウィンは城門の方向へと通り過ぎる。
「行くぞ」
「ええ? でもー」
「バカ、邪魔なんかしたら、ホントに呪われるぞ」
そう口にすると、訳の分からない笑いがこみ上げてきた。ケティカは渋々後から付いてくる。
「なに笑ってるんですか」
ああしてフォースが変わらずにいるうちは、術に引っかかることなく、自分はこの城にも自由に出入りできるだろう。これから先、自分が組織する軍の力を、発揮する機会がこなければいいと思う。
そのまま振り返ることなく、湖面に映る晴れた空を楽しみながら、ウィンはルジェナ城を後にした。
☆おしまい☆
※hiroさまのリクエストで書かせていただきました。ありがとうございました。m(_
_)m
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