レイシャルメモリー後刻
第4話 目が離せない 6


 頬を緩めかけた兵士に、冷たい視線と言葉を向けた。
「おっ、俺がですか?! そんなぁ、せめて服くらいリディア様が」
「リディアは小間使いじゃない」
「じゃあ、イージス殿が」
 その言葉に、イージスが深いため息をつく。
「まだ分かっていないようですね」
「ここを通したのもお前だろ。後始末までしっかりやれ」
「そんなこと言われましても……」
 兵士は弱々しい声で言うと、リディアに慈悲でも請うような視線を向ける。
「リディアは俺と私用」
 俺はリディアを兵士の視線から隠すようにして、兵士とイージスの間を通り抜けた。兵士の顔が一瞬にして赤くなる。
「しっ、しよう、って。ままま待ってくださいよっ。昼間っからそんなコトを……」
「は?! ば、バカやろ、私用って言ったんだ。駄洒落じゃねぇ、落ち着いて音調をよく聞け!」
 余計な勘違いをされたことで、こっちまで顔が赤くなっている気がする。
「イージス、後を頼む。この城の兵士にあの女は向いてない。何かあったら、そいつを首にしとけ」
 振り返らずに言いつつ、俺はそのまま私室の方向へと足を踏み出した。後ろから兵士が俺を止める声が聞こえたが無視する。すぐにイージスが兵士に指示をする声と取って代わった。
「フォースは私だけの人でいてくれるのよね?」
 腕の中で遠慮がちに言ったリディアに笑みを向ける。
「当たり前だ」
 そう返すと、微笑んだリディアの視線がこっちを向いた。
「あの兵士も踊り子さんも、イージスがなんとかしてくれるわよね」
「ああ。もう大丈夫」
 俺はリディアの見せた笑顔に安心し、うなずいて見せた。
「じゃあ、フォースも気が済んだのよね?」
「そうだな。半分だけ」
 そう答えると、リディアは不思議そうに首をかしげる。
「え? 半分? 半分って?」
 私室の前まできてリディアを降ろし、逃げられないよう、その手を取ってドアを開けた。
「え? フォース?」
 キョトンとしているリディアの手を引いて部屋に入れる。
「ちゃんと見ないと」
「あ。……、そ、そんな」
 文句を言われる前に、きつく抱きしめて口づける。唇が離れると、リディアはわずかな笑みを浮かべて俺を見上げた。
「もういいの。フォースが私を綺麗だって思ってくれてるのも信じるわ」
「ホントに? 見なくていいのか?」
 リディアは真剣な目で何度もうなずく。
「分かったよ。じゃあ、俺に見せて」
「え?」
 固まってしまったリディアに笑みを向け、俺は部屋のドアを閉めた。

☆おしまい☆

※ドラ☆さまのリクエストで書かせていただきました。ありがとうございました。m(_ _)m

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