レイシャルメモリー後刻
第2話 起きて見た夢 14


「ホントにレイクス様の動機って、何をするにしても……」
 ジェイは身体中の力が抜けたような笑みをリディアに投げた。
「あ、あの、ごめんなさい。私……」
 ジェイを見ながら軽く頭を下げたリディアに、ジェイは慌てて両手の平を向ける。
「い、いえ、とんでもない。リディア様がいい方でよかったですよ。そうじゃなきゃ今頃レイクス様は極悪人ですって」
「てめ……」
 ジェイを睨みつけながら、何か言い返そうとしたが、もしかしたらそうかもと思ってしまい否定できなかった。ジェイは俺の視線から逃れるためか、報告書に目を落とす。
「ええと。読みますよ? 捕まえていただいた山賊は、最近近辺を荒らし回っていた輩でした。城から城主と使用人たちの遺体が発見され、手厚く葬りました」
 その文面に、俺はリディアと顔を見合わせた。城主の遺体は崖下にあったはずなのだ。
「城主の遺体が城に?」
「ええ。前に伺ったレイクス様の話とはズレがあるんですが。確かにそう書いてあります」
 リディアは不安げに俺を見上げてくる。ジェイは俺がうなずくのを見て、続きに目を落とした。
「なお、生存していた山賊五名は投獄、崖下の一名は気が触れており隔離、執事の格好をした賊は縛られたまま城主の遺体に短剣で胸を一突きにされる格好で、完全に息絶えておりました」
 リディアは息を飲んで口を手で押さえた。
「まさか、彼女が自分で……」
 思わず肖像の顔が頭をよぎる。真面目な顔の俺とリディアを見て、ジェイは肩をすくめた。
「イタズラの可能性は無いですか?」
「さあな。事情を知ってる奴なら、やっても変ではないと思うけど」
 俺の言葉に胡散臭げな顔をしたジェイが、ため息混じりに口を開く。
「知っている人は、みんな殺されてますよ」
 俺とリディアが城を出てから、街を飛び出していった騎士や兵士たちが城に着くまで、どのくらいの時間がかかっただろう。昼前には街に着いていたのだ。あまり長い時間とも思えない。
 その短い間に、崖下に遺体があることや、山賊が城で縛られて転がっている状況を把握していなければ出来ないことなのだ。
 そういえば。リディアが見せられた夢は、夢だと分かっていてなお、涙を止められないほど強烈なモノだった。しかも、リディアがその恨みから執事の頭を鞘付きの剣で殴るほどだ。もしかしたら本当に彼女が自分でかたきを取ったのかもしれないと思う。
 リディアは目を伏せると、長く息をついた。
「……これで、少しでも安らかに眠れるといいけど」
「大丈夫、思いは遂げたんだろうし」
 城主の遺体が執事を殺したことを疑ってもいない様子のリディアに、俺はうなずいて見せた。そして、城主が安らかに眠れるよう、祈らずにはいられなかった。

☆おしまい☆

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