レイシャルメモリー後刻
第2話 起きて見た夢 13


「その気持ちなら充分に分かるさ。だけど、お前の気持ちは理解したいとも思わない」
 俺は剣を押し返し、その勢いのまま剣のガードをめがけて突きを出した。男の手から剣が離れ、剣を目で追った首に手刀を打ち込む。飛んだ剣が離れたところで床に落ちて、乾いた音を立てた。
 リディアにロープを取ってもらい、男がもうろうとしているうちに縛り上げ、城主の部屋まで歩かせてベッドの足に繋いだ。他の三人も同じように縛り上げ、執事は玄関へ、他二人は倉庫や台所へと、何をしていた奴か分かりやすいようにバラバラな場所にくくりつける。
 裏口から外に出る時、気がついた頭首がわめく声が響いていた。
 後は街に行って然るべきところに知らせるだけだ。俺とリディアは、騎乗して城を後にした。
「もっと早く来てあげられたら……」
 リディアは悲しげな瞳で崖下の方角を見つめ、小さくつぶやいた。
「こういう賊を殲滅すること、少しでも治安をよくしていくこと。俺たちに出来ることを地道にやっていくしかない」
 まだいくらか寂しげだが、リディアは柔らかな笑みを浮かべる。ええ、と返事を返した唇に、俺はそっと唇を重ねた。
 街へ降りたら、ここのことを報告して、全てを片付けてもらおう。城主の遺体も、どこかにある城の使用人や城主の恋人の遺体も探し出して、丁重に葬ってもらえるように頼もう。
 ラジェスへ向かう分かれ道まで戻った時、道らしい道ではない方へ入っていたことに驚いた。ここを通る時には、すでに城主に呼ばれていたのかもしれない。俺に睡眠薬を盛らせ、リディアに夢を見せるために。

   ***

 後日、あとはマクラーンに入るだけという日のことだ。俺たちが取っている部屋に、報告書が来たとジェイが入ってきた。城のある土地の騎士からのモノらしい。ジェイは部屋へ入ってくると、ベッドに並んで腰掛けている俺とリディアに向き直る。
「あの城へ行った時、何をしにそんな脇道へ入ったんです?」
「だから言っただろう。きっと城主に誘われたんだ。その脇道しか見えなかったんだから」
 ジェイは、いかにも楽しそうにニヤニヤと笑う。
「リディア様に見とれていたのではないですか?」
「それ、山賊も言ってたな」
 その言葉に、ジェイはブッと吹き出すと、無理矢理張り付けたような笑顔を見せた。
「いえ、どうか出来るだけ危険なことは避けてください。どうしてわざわざ自ら出向いたりなさるのか、理解不能です」
 難しい顔のジェイに、俺は憮然とした顔を向けた。
「どうしてって。夢の中でもリディアに無礼を働かれれば腹も立つだろ」
「はぁ? 何言ってんですか。夢ですよ? 腹なんか立ちませんって、普通」
 こんなに力一杯否定されたら、俺は苦笑するしかない。リディアは恥ずかしそうに頬を染めてうつむいている。

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