レイシャルメモリー後刻
第2話 起きて見た夢 12


「まぁ、でも良かったじゃないか。本気でやらなければならない相手なら、生かして捕まえるなんて考えていられない」
 俺はゆっくり右にずれて、リディアを部屋の角にやり、奴らに向き直った。
「こんな、クソ重いモノも持ってこなくてよかったんだけどな」
 俺がロープを置くのを合図にしたように、奴らは同時に剣を出してきた。執事が左から薙いできた剣を腕に沿わせた鞘で受け、使用人が振り下ろした剣は剣身で受け流す。執事が俺の後ろに入り込もうと踏み出した足を蹴り飛ばしながら、背の真ん中を鞘で殴って転ばせ、使用人の突きを剣ではじき身体は思い切り蹴飛ばした。
 使用人が起きあがる前にと、執事の後頭部に狙いを定めた時、鞘に収まった剣がちょうどその頭に振り下ろされ、ゴンと大きな音を立てた。何かと思って剣をたどって見ると、リディアがニッコリ微笑んでいる。
「彼女の恋人のかたき」
 その声が聞こえたか聞こえないかは分からないが、執事は持ち上げかけていた頭を床に落とし、意識を失った。
 リディアに笑みを返して、俺は立ち上がった使用人に向き直った。城主に成り済ましていた奴が、慌てた様子で駈け込んでくる。
「お前ら、なんてだらしない!」
「バカ! 隠れていて後から助けてくれればよかったんだ!」
 情けない会話だと思いつつ、言い返した使用人に、そうだな、と同意してやる。
 畜生、と叫びながら、使用人が斬りかかってきた。まっすぐな剣を難なく受け流すと同時に腕の下へと入り込み、みぞおちに肘を入れる。
 俺に覆い被さるように倒れてきた向こう側から、仲間ごと俺を斬ろうというのか、城主に成り済ました男が剣を振り下ろしてきた。俺は抱きとめた格好の男を傷つけないよう、その剣を鞘で受ける。
「最低だな」
 攻撃に失敗して身体を引いた男に言葉を投げ、俺は使用人を床に転がした。
「頭首はお前か?」
「そうだ」
「城を乗っ取るだなんて、ひどいことをしやがる」
「ひどい? どっちがだ。この城だって、元々は俺のモノなんだ」
 睨みつけているからか、怒りからか、男の声がいくらか震えている。
「両親が死んで維持が出来ないからって安く買いたたきやがって。俺はただ取り返しただけだ!」
 その言葉に、思わず嘲笑が口をついて出た。
「取り返した? 何をだ? あんたは誇りを失っただけだ。何も取り返せてなんていない」
 男は目を見開くと、剣を持っていない方の手で作った拳を震わせた。
「肉親を失う気持ちが、てめぇに分かってたまるか!」
 そう言いつつ振りかぶった隙だらけの剣を、俺は素直に剣で受けた。

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