大切な人 06-2


 恋人になって、何回も木の所で会って、ある日フレアはミューアに私を愛しているかって聞いたんだ。でも、ミューアは答えられなかった。フレアの身体はほとんど歳をとらないけど、ミューアは何十年かの短い間に老いて死んでしまうのが分かっていたから。フレアを真剣に大切に考えていて、とても愛しているから、愛しているって言えなかったんだ。だって、ミューアだけ老いていくのを見るのって、で、死んでしまうのを見るのって、フレアには辛いことでしょう?
 俺にはよく見えたんだけど、フレアには悲しいことだったみたい。想う気持ちも、そんな小さなことからトゲになってしまうこともあるんだね。それからはフレアもミューアも、お互いにちょっとしたことで傷つき、傷つけてた。
 そんなことを重ねて、とうとうフレアはミューアにドリアードのキスをしたんだ。ミューアはとても驚いたみたいだったけど、抵抗しなかった。最後に、これでフレアが死んでしまうまで身体だけは一緒にいられるんだねって笑ったんだ。
 それが愛情だってのは分かるんだ。でも、胸に刺さったら痛いんだよ。ミューアの愛情は、フレアの胸からずっと抜けなかった。ミューアの身体を抱きしめて、これはミューアだけどミューアじゃないって泣いてた。
 時が経って木が死ぬと、ドリアードも死んでしまう。フレアの木の死期が近づいてきて、フレアがとても怖がっていた頃、フレアはたくさんの騎士にドリアードのキスをして、自分の側に置いたんだ。俺が守ってあげるからと言っても、寂しかったのかな、フレアは聞いてくれなかった。
 その五人目がフォースだったんだ。でも、ドリアードのキスは途中で拒否されて、魔法は半端にしかかからなかった。
 フレアはムキになってフォースを引き込もうとした。でも、フォースはなかなか木の領域に入って来ないから、近づくこともできなかった。だから結局じっと待っていたんだけど。
 そうして見ているうちに、フレアはフォースがミューアと同じ思いを持っていることに気付いたみたい。フォースのも最初はリディアにとって痛い愛情だったんだ。ミューアがフレアを好きだったみたいに、フォースはリディアのことだけを考えてた。リディアさえよければ、フォース自身は死んでもいいって思ってたんだ。フォースが命がけで守っても、リディアにはそれが痛くて重たかった。
 同じだと気付いてしまったからかな。フォースとリディアがバルコニーから落ちた時、フレアは残りの命と引き替えに、二人を救ったんだ。

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