三つの荷物 2


「ねえねえ、あの二人、仲がいいのね」
「うん? わかんないぞ? 荷物が一つしかないってことは、案外帰る場所が違ってたりしてな。不倫とか」
「まさか、そんなこと……」
「あの人たちは、大きな荷物をどっちか一人が持つんだ」
 そんな風に言われたら、美穂には反論ができなかった。それと同時に、彼らのように仲よく歳をとりたいなどと言えなくなってしまう。
 美穂の夢を直之に伝えたい、ただそれだけなのに、好機を逃してしまった気がした。でも、それでよかったのだ。あんな風になりたいと言った二人が、直之にとって不倫に見えていたのだから、最悪な言葉を避けられたのだろう。
 隣に並んだ直之が、美穂がついたため息を覗き込んできた。
「俺らは俺らなりに歳をとっていければいいな。こんな風に荷物も分け合ってさ」
 少しだけ頬を赤くすると、直之は前を向いてサッサと歩き出す。美穂は止まりかけていた足を速め、直之に並んだ。
「あ。忘れ物」
 直之が急に足を止め、美穂は目を丸くして振り返る。
「ええ? なに? どうしよう。戻った方がいい?」
「なぁんて」
 直之は慌てた美保に笑みを向けると、二つ下げていた袋を左手に持ち直した。空いた右手が美穂に差し出される。
 美穂は笑みを浮かべて直之の腕を取った。

☆おしまい☆


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