オイラのシッポ 2
あぁ……。あれ? オイラどうしたんだろう。なんだかひざ小僧をすりむいたみたいだ。え? ひざ? あれ?! オイラ人間になっちまったみたいだ! いったいどうしたんだろう。あ、お腹の下でうごめいているこの犬はもしかしたら。うわっ! やっぱりそうだ、オイラだ!!
「クーン、クーン……(いたいよぉ)」
「泣くな、泣きたいのはオイラの方だ(ワンワン)」
「ワンワン、ウー、>以下省略(うぅ、ヒック、あれ? ボクどうしちゃったんだろう。なんだかまわりのモノが全部大きくなっちゃったみたいだ。あっ! ボクがいる!! オバケー!!」
「あ、待ってよ、逃げないでよぉ!」
あーあ、凄い勢いで走って行っちゃった。冗談じゃないよ。なんでオイラが人間にならなくちゃいけないんだ? どうしよう。オイラの名前はなんていうんだろう。年はいくつだ? すんでいるところはどこだ? ……ああ、考え方まで人間みたいだ。
「うわ〜〜ん!」
なんてことだ、声までだ。
あ、オイラが戻ってきた! やっと自分が犬になったことに気づいたんだろうか。
それからいろいろ話した。オイラたちが入れ替わったこと。オイラと入れ替わったのは、『かたぎりみきお』という小学校の一年生で六歳。住所は三丁目の一六番地の七(これは覚えるのに苦労した)。親友は隣の隣の隣の隣の隣……、一回多かったかな? まぁ近くに住んでいる、いのうえかずおくんという名前の男の子だってことが分かった。
あと、困ることが一つあった。オイラはみきおと一緒にいないと何も分からないのだ。みきおもオイラたちのおきてをまったく知らないと言っていた。
でも、みきおはなかなか頭がよくて、そばにいればまた反対の殻ができて元に戻れるかもしれないことを思いついた。それで、みきおとオイラはいつも一緒にいることを約束した。こうやって約束する時はゆびきりというのをするそうだ。オイラは一度そういう経験をしてみたかったが、無理だった。みきおの小指がどれだか分からなかったからだ。
みきおは、かずおくんならこんな風に入れ替わったことを分かってくれるんじゃないだろうかと言い出した。オイラががっかりしているうちに、ちゃんと考えていたようだ。やっぱりみきおは頭がいい。それからオイラは、「かずおくん遊ぼー」と言う練習をたくさんした。