オイラのシッポ 3


 お庭というところで、おいらがかずおに全部を打ち明けた。かずおは最初、とても不思議そうな顔をして、首をしきりにひねっていたが、一応は納得してくれた。そしてオイラたちに協力することを約束して指切りをした。(やったぜ!) それからオイラの名前がポチに決まった。みきおもかずおも犬の名前はポチなんだって言ったからだ。そして、元に戻る方法を三人で、いや、二人と一匹で考えることにした。でもオイラは、みきおは頭がいいことを知っていたので、オイラが考えなくてもみきおが考えてくれると思った。オイラはなんの心配もしていなかった。
 その時、かずおのお母さんが『ケーキトジュース』というモノを持ってきてくれた。オイラはみきおに小声で『ありがとう』と言えといわれたのでそう言った。
「ゆっくり遊んでいってね」
かずおのお母さんはそう言って家の中に入っていった。その『ケーキトジュース』というモノはとても美味しかった。家の裏にある空色のポリバケツというモノに大切そうにしまってある食べ物よりも、とても甘くて舌がとろけるように美味しかった。
「(美味しいモノは家の中にちゃんとしまっておくことになっているのさ)」
 みきおは笑って教えてくれた。なんだ、そうだったのか。美味しくないモノを家の外にしまうのか。それなら今度から、家の中にある食べ物を狙ってみることにしよう。
 それにはやっぱり犬に戻らなくてはならない。みきおとかずおに考えるのを任せてはいられないので、オイラも考えることにした。でも、何も浮かばなかった。みきおもかずおも思いつかないと言った。二人、今は一人と一匹にさえ思いつかないんだから、オイラが考えても仕方がないような気がした。いや、まてよ?
「もう一度、今度はオイラが殻になってみたらどうだろう」
 やった! 思いついたぞ! これはいい考えだ。みきおもかずおも、すぐにでもやってみようと言った。
 オイラはみきおの上にそーっとかぶさってみた。いち、に、さん、ご、……。じゅうまで数えても元に戻らない。
「だめだぁ」
「戻らないよ」
「(じゃあ、今度はぼくがうえになってみよう)」
 いち、にい、さん。さんであきらめた。だって、ちっとも殻らしくないんだ。これじゃあ変われない。みんな、こまってしまった。また考えてみることにした。
 なんだか家の前を人がたくさん通っているようだ。ペチャクチャいろいろ声が聞こえてくる。みきおは何かヒントがあるかもしれないから、その話を聞きに行くと言って、門の所へ走っていった。
 カワイイとかうちは飼えないとか言いながら、その人たちが通り過ぎていく。そして向こうの道を越えた。でも、みきおは戻ってこない。まだこない。まだ……。オイラはみきおを見に行った。いない! 大変だ! さっき通った人の誰かに連れて行かれてしまったんだ。どうしよう、どうしよう……。かずおと話し合いの結果、二人で探しに行くことにした。

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