脇道のない迷路 8-1


 次の日、俺とバックスは出陣式の後、パレードの中にいた。ちょうど隣り合っていて、バックスは声をかけたそうに横目でちらちらと俺を見ている。聞きたいことでもたまっているのだろう。
 バックスと目が合って、俺はやんわりと微笑んで見せた。途端、小さな子供に指を差され、カワイイなんて言葉が飛んできてげんなりする。こんな風に笑うと、俺はまだガキに見えるらしい。バックスがケタケタ笑っているのに腹が立つ。凄味がないとなめられるよな。でも、最初は見下されていた方が、何かと楽かもしれない。しばらくおとなしく猫をかぶっていよう。
 そんなことを思っていて、少し離れた噴水の側にいる、白いドレスの子が目についた。あれはリディアだ。
 リディアに出会った日、助けようと思ったワケでもないのに、気がついたら手を出していた。俺の中に、そう言う衝動があったのだ。今はそれを信じようと思う。この気持ちがある限り、俺は騎士をやっていける。
 今なら母を守れなかったあの時の自分と同じ弱さを、カイラムの中に見ることができる。俺が剣をとるのは、カイラムが家族を守れなかった悲しさに剣を手にしたのとは違う。俺は決して恨みで人を斬ることはしない。そう心に誓う。
 これから始まるのは、騎士として命をかけた戦いの日々。この胸に自分の大切なモノをしっかり抱いて、この手の剣で守っていけばいい。自分の気持ちに逆らわずに正直に。そしてまずは生き抜くことだ。
 そして少しでも強くなって、いつかは理想を形にしたいと思う。

☆おしまい☆

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