ジェイストークが発した言葉を、アルトスは思わず振り返って睨みつけた。ジェイストークは、口の端で笑う。
「落ちたのか」
言い終えてから吹き出して口に手を当て、ジェイストークは笑い声が漏れないよう必死に堪えている。アルトスは腹立ち紛れに拳でカウンターを叩きつけた。ドンッという音に息を飲んで押し黙った兵士達の中、ジェイストークは肩を揺らして笑いだし、それに安心したのか、まわりにも再びゆっくりと騒がしさが戻ってくる。アルトスは眉を寄せて目を細め、ジェイストークの表情を横目で見た。
「お前、知って」
声量を無理矢理抑えたようなアルトスの声に、ジェイストークは笑いをかみ殺す。
「ああ。行っちまった後だったけどな。引っかかると思ったけど、殺されたりはしないと思ってね。放っておいた」
ジェイストークは、唖然とした顔のアルトスに微笑を向けた。
「で、似てたか?」
その言葉に、アルトスは息を飲んだ。そっくりだと思った時の胸の鼓動が甦る。
「そうか。似てたんだな」
「誰にだ」
不機嫌に眉を寄せたアルトスの腕をもう一度掴み、ジェイストークは隣の椅子を強引に勧めた。
「ま、座れ」
渋るアルトスを尻目に、ジェイストークは視線をカウンターの中に向けた。
「マスター、さっき話したカクテルをアルトスに」
「そ、そんな、滅相もないっ」
なぜか狼狽しているマスターを見て、アルトスは席に付く気になった。ジェイストークの本心を探るようにその表情をのぞき込む。ジェイストークは、隣に座ったアルトスに笑みを向けると、もう一度マスターと向き合った。
「出所がマスターじゃないことは分かっているから大丈夫」
マスターの怯えた目に、アルトスもうなずいて見せる。それを見てマスターはようやくシェーカーを手にした。それでもいくらか緊張しているのだろう、ディーヴァの山から運ばれた氷がシェーカーの縁でカチカチと二度音を立てた。ジェイストークは、酒に手を伸ばしたマスターの背中に苦笑すると、アルトスに顔を向ける。
「メナウルに行ってくることになってな。レクタード様のお迎えと、ついでに調査だ」
ついでという言葉に、アルトスは一瞬冷ややかな目を向け、カウンターに視線を戻した。シェーカーの中に無色透明な酒と青い酒、甘い香りの赤い液体を少しと、ライムが入れられていく。口を閉ざしたままマスターの手元を見ているアルトスに、ジェイストークは冷笑を浮かべた。
「だが、ここドナで調べただけでボロボロ出てきてな」