レイシャルメモリー後刻
第13話 その輝きは永遠に 4


「どうすればいいのか、サッパリ分からないの。あなた神官なんだから、なんとかしてくれないかしら」
 まくし立てられて半分気をとられつつも、グレイは真剣に考えた。恨みじゃないなら、残る要因は一つしか思いつかない。
「でしたら、未練、ですか?」
「未練? そうね、きっとそれだわ! それを無くせば、シャイア様も迎えを寄越してくれるかもしれないわね!」
 ヤーラが手を胸の前で組んで、クルッと一回転したのが小窓の向こうに見えた。暗いどころか、どこまでも明るい人だ。そうグレイは思ったが、ヤーラはそれきり動かない。少し待ってみたが、何も言わない。
「……、どうかされましたか?」
「分からないの」
「何がです?」
「何に未練があるのか」
 思わず噴き出しそうになるのを、グレイは真剣にこらえた。帰れると喜んでいるとはいえ霊なのだ。ここで笑ってしまうと、さすがにたたられそうな気がする。
「それを私に聞かれましても……」
「分かってるわよ。自分で探すわ。シャイア様がそうしろとおっしゃるなら、きっとそれにも意味があるんでしょ?」
「ええ、きっと」
 どうやら解放してもらえそうだと思い、グレイはヤーラに気付かれないよう、小さく息をついた。うつむいたことで目に入った小窓から、ヤーラが顔をのぞかせている。
「うわ」
 グレイは思わずその顔に見入った。死相が見えるようなことはなく、頬にはほんのり赤みが差して生き生きしている。いや、幽霊に向かって生き生きしているというのも変な話しだが。
「うわって。それだけ? 怖がらないのね」
「怖いと言うより可愛いですよ」
 グレイの言葉に、ヤーラは可笑しそうに笑い出した。
「ありがとう。じゃあ私、探してみるわね、未練」
 そう言うと、ヤーラは人がいない事を示す札を立てかけた。グレイの方が出ていけということなのだろう。
「では、私は戻ります。何か必要な物などありましたら言ってください」
「物なんてあっても使えないし」
 そう言われて、グレイはヤーラが幽霊なのだと思い出す。
「そうでした。では、何か手伝えることでもあれば」
「たまにでいいから、様子を見に来てくれたら嬉しいのだけど」
 少し不安げなヤーラに、グレイは、そのくらいなら、と微笑んで見せた。
「では、また来ます」
 元気といういい方は正しくないのかもしれないが、ヤーラは元気に手を振る。グレイが懺悔室のドアを閉める時、一瞬ヤーラの暗い顔が見えた気がした。

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