レイシャルメモリー後刻
第13話 その輝きは永遠に 6
「そのようですね」
グレイは、ため息が出そうになるのをこらえ、ヤーラの顔をのぞき込む。
「で、未練は見つかりましたか?」
未練と聞いて、ヤーラは大きなため息をついた。
「急かさないで。なんかこう、気持ちがモヤモヤしているのは分かるのだけど」
「進歩しているんですね」
暗い顔を見たグレイは、ヤーラに笑みを向けた。ヤーラの表情がパッと明るくなる。
「そう? そうよね! 自分の気持ちの問題だなのだから、きっともう少し突き詰めれば分かるわよね!」
ええ、と返事をしながら、グレイは明るかったヤーラの顔が少し曇るのを感じた。
「何か思いつきましたか?」
「きっと、コレなんじゃないかって思うことはあるのよ」
ヤーラは声を明るく保とうと、努力しているようだ。少しでも切っ掛けをつかめたのならいいことだと思う。
「何です?」
「言ってもいい?」
その切り返しを奇妙だと思いながらも、グレイは、どうぞ、とうなずいた。ヤーラは言い辛そうに視線を泳がせると、グレイに目を留める。
「私きっと、あなたが好きなの」
「……、は? またそんな」
「一緒にいたいんだわ。だから、逝きたくないの」
逝きたくないも何も、すでにこの妖精は死んでいる。それでもグレイは、目の前にある、いや、もしかしたら何もないのかもしれないが、切なげな瞳を可愛いとは思っていた。
でも、一緒にいる、ということを実行するには、一生束縛されるか、グレイも霊という存在にならなくては無理だろう。速攻で拒否したくなった気持ちを慌てて飲み込む。
「難しい問題だし、少し考えさせてくれるかな」
その言葉で、緊張して固まっていたヤーラの表情がフッと緩んだ。
「ずっと待ってるわ。断られたら、どうしようかと思った」
どうしようって、何をどうしようと言っているのか。とりあえず拒否しなくて正解だったのだとグレイは思った。
「じゃあ、また後で。でかけてきますので」
「うん、待ってるね」
とにかく笑顔を作って懺悔室を出る。待っていると言われたものの、懺悔室を出ても隣にいたようなことを言っていたので気が抜けない。さてどうしたモノかと考えながら、廊下を戻る。
バックスも言っていたが、今日はタスリルが来る予定になっている。こんなことを相談できるのは、タスリルくらいだろうか。ヤーラの命を奪った薬を知っているのだから、もしかしたら何か分かるかもしれない。とにかく行ってみようとグレイは思った。
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