レイシャルメモリー後刻
第13話 その輝きは永遠に 7


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 タスリルの店のある細い路地に、多くの兵士が出入りしているのが見える。いつもなら閑散としている場所だ。何かあったのかとよく見ると、荷物を運び出していると分かった。もう引っ越しを始めているのだ。メナウルとライザナルの兵士が混在していて、声を掛け合いながら作業をしている。
「あ、グレイさん」
「え?」
 声をかけられて、思わず顔をまじまじと見た。メナウルではフォースの隊にいたブラッドが、ライザナル式の鎧を着けている。その後ろから、さらに見覚えのある顔、アジルが同じようにライザナルの鎧を身に着けて歩いてきた。
「グレイさん、お元気そうで」
「お二人もお元気そうでなによりです。勤務はフォースのところに?」
 グレイはそう聞いて笑みを向ける。
「ええ。もう容赦なく下っ端からですよ。それでもすぐ下で働いている時と、なにも変わりないんですけどね」
 そう言うと、アジルはブラッドを促して、荷物を馬車へと運んでいった。ライザナルへ行ったとは聞いていたが、本当にフォースの元で働いているんだと分かって安心した。
 所属どころか、二つの国の兵士までもが無理なく混在していることが、グレイにはとても自然に感じた。ほんの少し前まで長い戦が続いていたことが、軍でさえも微塵も感じられないのが嬉しい。グレイは、混雑はしているが雰囲気のいい路地に足を踏み入れた。
 タスリルの店の扉は開け放たれていて、その横にはナルエスが立っていた。グレイを覚えていたのだろう、顔を見ただけで、どうぞ、と中を指し示す。グレイは一礼して中に入った。
 中にも兵士が数人、荷造りをしていた。棚や机はそのままだが、その上にあった細々したものはおおよそ運び終えていて、部屋は随分と広く見える。奥にある棚の影から、フォースが顔を出した。グレイには、大国の皇太子が引っ越しの手伝いをしていることが可笑しく、逆にフォースらしいとも思う。
「ああ、グレイ。手伝いに来てくれたのか?」
「そんなわけないだろ。バックスが楽しみにしてるって言ってたから伝えに来たんだ」
 速攻で返した言葉に、フォースは乾いた笑い声を立てた。
「何をだ。ライザナルの酒とかお菓子とか、赤ん坊の服とか」

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