レイシャルメモリー後刻
第13話 その輝きは永遠に 13
「あいつら……。他にもいるのね」
グレイはその言葉にうなずきはしたが、小さな窓からはヤーラの顔は見えない。
「それが結論?」
弱々しい声で問いかけられた。グレイは、ああ、とハッキリ声に出してうなずく。
「もう少し前に、ヤーラに出逢えていたら。そうしたら俺……」
グレイはそう言いながら、頼むからこれで納得してくれ、と願っていた。小窓から見えるヤーラは、微塵も動かずに黙ったままだ。
「……、ヤーラ?」
名前を呼ぶと、ヤーラが少しだけ身体をグレイに向けた。
「そっちに行ってもいい?」
「いいよ」
グレイは間を開けずに答える。言われるかもしれないと思っていた言葉だった。シャイア神の元に送ってやれなかったら、それは自分の責任だと思う。そのために神官をやっているのだという覚悟があった。
壁から手が見えてくる。グレイはその手を取って引いた。壁を通っているのに、ちゃんと感覚があるのが凄いと思う。少し身体を縮めた格好で、ヤーラは壁を通り抜けてきた。同じ部屋にいてもヤーラが見えているのは、その身体がさっきまで無かった虹色の光をたたえているからなのだろう。
狭い懺悔室の中でグレイの目の前に立つと、ヤーラは顔を見上げてきた。グレイがほんの少し笑みを浮かべると、ヤーラはホッとしたように息を吐く。
「人間にしては線が細くて、いい男だと思ったんだけど」
「それはどうも」
すぐに返したグレイの返事に、ヤーラはクスクスと笑う。
「でもやっぱり人間なのね。サッサと一人で決めちゃって」
「妖精は二人で決めるんだ?」
ヤーラは首を横に振って苦笑する。
「時間を掛けてゆっくり作っていくの。何も決めたりしないわ。あなたは人間だから私たちと違って長く生きられないし、朽ちたらまっさらな魂に戻ってしまう。私が望んだこと自体、無理な話だったのよ」
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