レイシャルメモリー後刻
第16話 この街道の果てまで 2


 そのことでレイサルトは、自分は守られているのだ、と強く感じるようになった。思い出すに付け、嬉しいような恥ずかしいような、くすぐったい気持ちになる。そして同時に、自分が反抗期であるだろうことも理解してしまった。
 気にしないでいようと思っても、一度意識してしまうと容易には止められない。だが、ジェイストークに反抗期だと悟られたくなく、余計なお世話だと思う気持ちに対しては、努力して目をつぶっていた。
「これ、メナウルの果物だよね?」
 デザートに出された大きな柑橘類の果物を見て、真ん中の弟レンシオンが嬉しそうに目を細めた。柑橘系の果物は気温が足りないので、ライザナルでは南方でしか実らない。この大きさの物は、間違いなくメナウル産だ。
「そうだよ」
 レイサルトがそう答えると、十歳になったばかりの下の弟レファシオが、反対側から、ふぅん、と、ため息混じりの声を漏らした。
「レイ兄様、食事が終わったら出発されるんでしょう? メナウルに行けていいなぁ」
 その羨ましげな声に、レンシオンが、でもね、と口を挟む。
「父上も母上も兄上も、お仕事で行かれるんだ。レファシオも行きたかったら、役割を負わせていただけるように勉強しなくちゃ」
「ええ? 勉強かぁ。ううん……」
 難しい顔で考え込んだレファシオを見て、お互いに一瞬だけ目を合わせた両親が控えめに笑った。
 レイサルトは、フォースとリディアと一緒に、五年前から毎年メナウルへ行っていた。勉強をしたから行けるのではなく、勉強をしに行くのだとレイサルトは思う。水と作物のやりとりについての確認など、仕事面での行動にも同席し、城都やヴァレスの様子やドナ近辺の畑を見て回った。

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