レイシャルメモリー後刻
第16話 この街道の果てまで 4
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ラバミスに腹を割ってと言われたからには、大きな部屋で対面するのは不自然だ。だがフォースは、狭い場所で顔を突き合わせて話す気にはなれなかったし、実際帯剣はしなくても、剣を持てるだけの空間は欲しかった。
レイサルトを見送ってリディアと自室に向かいつつ、フォースはラバミスと会う部屋を用意するようにと、すぐ側にいるジェイストークに伝えた。
「承知いたしました」
ジェイストークは軽く頭を下げると、フォースの耳元に口を寄せる。
「ウィン殿は、特に情報は無いと。完全にラバミス殿が単独で動かれているようです」
その言葉に目を向けることなく、フォースは一度うなずいた。ウィンはいつでも反乱を起こせるようにと、フォースが皇帝になった今でも、血の気が多い輩を集めて囲っている。どこかから不満が出れば、その中の誰か彼かが知っていて、いち早く問題をつかむことができる立場にいるのだ。
話しが大きくなれば、敵わないと分かっていても、たぶん本当に攻めてくるだろうとフォースは思う。だが、だからこそ、ウィンはそのままの立場でいて欲しいと思っていた。ウィンもまた、フォースにとって大切な目となっているのだ。何でもできる立場だからこそ、ウィンのような枷が必要だと思う。
ジェイストークが、では、と側を離れた。部屋を用意しに行くのだろう。マクラーン城には謁見の間をはじめ、来客と面会するために造られた部屋が数多くある。細々と打ち合わせをしなくても、ジェイストークなら自分の気持ちを汲んだ上で、最適な部屋を選んでくれるだろうと、フォースは疑いの欠片も持っていなかった。そして、ラバミスの用意ができ次第、フォースもその部屋に行く予定でいる。
護衛の騎士二人を部屋の外に残し、リディアと一緒に自室に入った。いつもならフォースにとって、緊張から解放され、心の底からホッとできる時間だ。だが今日は少し違っていた。
一歩先に部屋に入っていたリディアが、ドアを閉めてすぐに振り返ったのだ。少し不安げなリディアの瞳が、努めて笑みを浮かべたのを感じ、フォースは思わずその肩をつかんで抱き寄せた。
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