レイシャルメモリー後刻
第16話 この街道の果てまで 7


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 食事のあと、レイサルトは予定通りの時間にマクラーン城を出発した。予定と違ったのは、一緒に行くはずだった両親、フォースとリディアが馬車にいないことだ。
 初めて両親の見送りを受けた。行ってまいります、と頭を下げ、できる限り冷静に、普段通り振る舞った。この旅の間、気が休まる時がないかもしれないと、レイサルトは思っていた。
 馬車はマクラーンの街を出て、街道を南下している。いくつかの地点で宿泊をし、一日に何度か馬を取り替えながら、メナウルに向かうことになっている。
 街道の脇は、ただひたすら作物の緑と土の縞模様が続いていた。レイサルトが生まれた頃、街道をこの形態にしたルジェナで盗賊の奇襲が減り、作物の収穫も増えたため、ライザナル全体で採用されるようになったらしい。畑は、奥に見える自然のままの斑な緑とは違った、穏やかで若い緑を見せている。
 道の脇に畑というこの形態を始めたのはフォースの発案だったと、レイサルトは周りの人間から聞かされていた。ずっと城内にいただけでは、思いつけないやり方だ。
 単純に父を誇ればいいだけのことだと、レイサルトは思い込もうとしていた。だが同時に、嫉妬心のようなモノがある。自分には考えつかないだろうと思うその感情は、恐怖にも似ていた。
 今回レイサルトは、フォースとアルトスの会話を聞いて、誰かが訪ねてきていることは知っていた。来客との話し合いから外されたことで、自分にはなにも出来ないのだろうと思う気持ちが強くなってしまった。できないから、フォースとの同席を許されなかった、そう思った。
 レイサルトは進行方向を向いて座っていて、その向かいにはアルトスがいる。誰かが来たという話しを持ってきたのはアルトスだ。アルトスは自分から話す人ではないし、余計だと思ったことは喋らない。
 来客が誰であれ、フォース本人がメナウルと定期連絡をするよりも、優先させなくてはならない人間ということは理解できる。だが、肝心のそれが誰なのかを、まだ教えてもらってもいない。知りたければ、レイサルトの方からアルトスに尋ねてみる以外に無かった。
 話をどう切り出すか考えても、少しもよさげな案が出てこない。レイサルトの視線が、何度か窓とアルトスを行き来した。
「何か?」

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