レイシャルメモリー後刻
第16話 この街道の果てまで 11


 ジェイストークが深々と礼をすると、ラバミスはつられるように頭を下げる。そこに緊張が見て取れたフォースは、逆に気持ちが落ち着いた。わざと便宜上だととれる堅い微笑みを浮かべ、ゆっくりと立ち上がる。閉じた本が、パタッと小気味のいい音を立てた。
「種族の方に、来ていただけるとは」
 ラバミスの前に立って、真っ直ぐ見つめる。落ち着かないラバミスに、フォースはソファーへ腰掛けるように勧め、自分はサッサとその向かい側に腰を下ろす。ラバミスは息なのか声なのか分からない音で、はい、と返してソファーに座った。
「お茶をお持ちいたします」
 ジェイストークは、視線を合わせたフォースの気持ちを察したのだろう、そう言い残して部屋を出て行く。ラバミスはジェイストークをチラチラと目で追っていたが、完全にドアが閉まると、意を決したようにフォースに向き直った。
「戦士、だな?」
 ラバミスの問いに、フォースは思わず息で笑った。その言葉を懐かしいと思う。それを肯定と取ったのか、ラバミスは安心したように再び口を開いた。
「種族の一員として、やってもらわなくてはならないことが残っている」
 口から出たのは敬語ではなかった。やはり少しでも上の立場から物を言いたい、すなわち有利に進めたいのだ。それだけ面倒なことなのだろう。それゆえフォースは、そのまま話しに乗るわけにはいかなかった。
「種族の一員になど、なった記憶はない」
 フォースが返した言葉に、ラバミスは凍り付いている。フォースはその顔に苦笑を向けた。
「早くに亡くなった母が、種族の者だったというだけだ。それも、何も知らされず混乱に巻き込まれ、様々な文献を調べてくれた友人から知った。だいたい種族の人間として会ったのは、あなたが初めてだ。これで一員だなどと、都合が良すぎると思わないか?」

12へ


前へ シリーズ目次 TOP