レイシャルメモリー後刻
第16話 この街道の果てまで 13


 ラバミスはボーッと何もないテーブルを見つめている。その視線が頼りなげに揺れた。
「確かに、戦士にとって種族の者が他人に見えても仕方がないというわけか」
 ラバミスは頭を抱え込んだ。当然このままでは話し合いにはならない。フォースは、強い意志を持ってラバミスを見つめた。
「何も聞かないとは言わない。ただ、種族の者だからといって、すべてを聞き入れるわけにもいかない。今はライザナルの皇帝だ。そこは理解してもらわないと困る」
 ラバミスはその力に押されたのか、口元を何度か引きつらせる。
「それは、……、分かる」
 そう言って肩を落とし、ラバミスは短くため息をついた。
「だが、やってもらわないことには……」
 ラバミスは眉を寄せて言いづらそうに、しかし真っ直ぐに視線を合わせてくる。フォースは言ってみるようにと、手のひらを上に向けて、どうぞ、と促した。
「強くはないが、時折シャイア神の声が聞こえるんだ」
 予想と違う言葉に、フォースの動悸が激しくなる。
「未だにか?」
「いや、五年ほど前までは、種族の誰にも聞こえていなかったんだが」
「それで、なんて言ってるんだ」
 フォースは思わず先を急かした。ラバミスは興味を引いたことに安心したのか、ホッと息をついてから口を開く。
「最後の巫女に会わせろと」
 その言葉に、フォースは息を飲んだ。ラバミスはフォースの感情に怒りの存在を見つけたのか眉を寄せたが、一息ついてから話しをつなぐ。
「巫女に直接話しをつけようとも思ったんだが。下界で聞くところに寄ると、戦士が巫女を娶ったと」

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