レイシャルメモリー後刻
第16話 この街道の果てまで 14


「目的は」
 忌々しげに聞き返したフォースに、ラバミスは首を横に振った。
「いつでも神は手っ取り早く、要点しかおっしゃらない」
 フォースは片手で顔を覆い、盛大なため息をついた。その話し方が、なにより神の言葉らしいと思う。神は種族の者に対しても、フォースとリディアに対する姿勢と同じ態度を取っていたのだ。だとしたら、詳しいことはラバミスにも分からないだろう。聞くだけ無駄ということだ。
 生け贄まで捧げてこの程度だなど、降臨が無くなって本当に良かったとフォースは思う。だが、シャイア神がなぜリディアに会いたがっているのか、皆目見当がつかない。
「当人が側まで行けば、何か伝えてくださるかもしれない」
 ラバミスの言葉を、フォースは顔をゆがめただけでやり過ごした。何か伝えるより先に、手を出される可能性もある。もし何か起こってしまったらと思うと恐怖心が起こってくる。そうなってからでは遅いのだ、用心するに越したことはない。
 だが用心といっても、神に対してどうすればいいというのだろう。いつも避けることはできなかった。起こってしまってから、対処するばかりだった。
「会わせられなかったら、一体どうなることか」
 ラバミスは、硬い表情を崩さないフォースに、追い打ちを掛けてくる。
「そうだな。分からない……」
 どこまで行けば、シャイア神の声が聞こえるのか。ライザナル側からディーヴァへ登るのは、山が険しすぎて無理だ。ディーヴァ山脈を南下して、メナウルのすぐ北を東側に回り込まなくてはならない。
 フォースはそう返事をしながら、ほとんど無意識のうちに、その行程を頭の中に描き始めていた。

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