レイシャルメモリー後刻
第16話 この街道の果てまで 17


 両親にしろこの夫婦にしろ、側で見ているにつけ、世の中にはちょうどいい伴侶が存在するのだと、レイサルトは信じていいと思えた。自分の伴侶を見つけることができるかと問われたら、分からないとしか言い様が無いのだが。
「そういえば、リオーネ様は……」
 先代皇帝クロフォードの正妻リオーネは、ルジェナ城に住んでいるが、まだ姿を見ていない。レクタードはレイサルトに苦笑を向けてきた。
「元気なのだが、少し記憶が混乱するところがあってね」
 そこまではレイサルトも話しを聞いて知っていた。うなずいて先の話に耳を傾ける。
「会わないでやって欲しいんだ。レイはフォースに似ているから、罪悪感か、もしくは敵意のようなものが喚起されてしまうかもしれない。静かに暮らさせてやりたくてね」
 分かりました、と返事をしながら、レイサルトはスティアのため息に目を向けた。
「私もたまにしか会わせて貰えなくて。でもお会いするとね、いつも楽しそうにしていらっしゃるわ」
 スティアはフフッと息で笑う。
 クロフォードもフォースも否定したのだが、フォースとリオーネとの間に確執があるとの噂は何度も再燃した。リオーネの安全確保のためにも、フォースは皇帝を継ぐ覚悟を強めたのだと聞いている。それを考えればリオーネは、嫌な噂を耳にしなくなっただけでも幸せなのかもしれないとレイサルトは思った。
「お茶をお持ちしました」
「入れ」
 レクタードの声でドアが開く。まずはアルトスが入室し、ドアの横、内側に立った。後からお茶や果物、お菓子を持った女性が三人入ってきて、テーブルに乗せていく。
「一人で行くことになって、日程はそのままなの?」
 隣の席に座ったスティアが言葉を向けてくる。
「変わりはないのですが、いくらか猶予をいただいています。陵墓完成の式典までに戻ればいいと」
 レイサルトがそう返すと、レクタードとスティアがチラッと視線を交わす。
「そう、そのお墓。次は私たちの番なのよ。お揃いでいいって言ったら、慣例と違うから見てから決めろって。一体どんなのを作ったの?」
「どんなって。幅が広くって、その……」
 ハッキリ言うのがはばかられて言葉を濁すと、レクタードは楽しげに笑い声を立てた。

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