レイシャルメモリー後刻
第16話 この街道の果てまで 18
「一緒に入るって?」
「ええ。そのようなことを言ってました」
お茶を置いた女性と目が合い、レイサルトは顔が赤くなった気がしてうつむく。スティアは、そういえば、とレクタードに視線を向ける。
「あなたのお父様が作るって言ってらしたのは何だったの? フォースのお墓だったのではなくて?」
「いや、話を詰めて作る段になってから、結局、息子の墓だと思ったら作れない、と言いだしてね。もともと代々自分で作ることになっているから慣例を守ることにする、とか」
「子供のお墓を作る気になれないのは分かるわ」
うなずいたスティアに、そうだけど、と返すと、レクタードはお茶を持って来た女性が部屋を出て行くのを見送りながら、ノドの奥で笑い声を立てる。
「でもねスティア、父はあの時、ちゃんと自分の場所の隣に、フォースの墓を確保したんだ。その向こう側がリディアさんで。それから、口を滑らしたのを聞いてしまったんだけど」
「なになに?」
「二人一緒に入る棺じゃ、遠くなるって」
二つの棺の隙間が無くなった分だけ、ということなのだろうか。レイサルトと同じ疑問を、スティアが口にする。
「せいぜい一歩分の違いじゃない?」
「私もそう思うよ」
レクタードは軽く肩をすくめた。端から見ていても、クロフォードにフォースが気に入られているのは分かっていたが、そこまでだったとは知らなかった。思わず冷めた笑いが口を突いて出る。
「あらレイ、子供好きは、フォースにも遺伝しているわよ?」
ブッと吹き出して、レイサルトは口を押さえた。お茶を含んでいなくてよかったと思う。
「スティア、脅してはいけないよ。リディアさんがいるうちは大丈夫だ」
「そうね、いるうちはね」
なんと返していいか分からず、レイサルトは両親の態度に思いを巡らせた。確かに仲はいいと思う。それだからこそ、片方がいなくなる、という状況が考えられない。
「本当に、そうなるでしょうか」
「ならないで済む方法が一つだけあるわ」
そう言ったスティアに、レクタードが、あるかな、と疑問を投げる。
「あるのよ。フォースが口を挟めないくらい寄り添える相手と結婚することよ」
「そうか。子供のことを考えたら邪魔をしてはいけないと思うだろうから、そうそう手を出すこともできなくなるだろうしね」
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