レイシャルメモリー後刻
第16話 この街道の果てまで 21


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「ここルジェナから少し南下して、麓を横切るのが早い」
 ラバミスは、机に広げた地図上のディーヴァ山脈南端を北東方向に横切るように指を動かして視線を上げた。
「リディアもいる。ギリギリまで馬車を使いたいんだが」
「この道が一番側まで行ける」
 そう言ったラバミスの目を、フォースは真っ直ぐ見返し、先を示すように促した。ラバミスはかすかに肩をすくめ、もう一度地図に目を落とす。フォースが凝視する指先は、ディーヴァ山脈東側をラジェスと向かい合うあたりまで北上し、そこから北西方向に山の中腹まで登る。
「ここからは徒歩だ」
 その指は、山を登って消える道の途中から左に折れ、南西へと結構な距離を移動して止まった。誰も知らなかった種族の村は、そこに存在するのだ。だが、地図の情報だけではリディアの足でどのくらい掛かるのか、予想が付けられない。道の険しさにもよるだろう。地味に進む以外にない。
「神の声は遠い。村でなんとか聞き取れるほどだ。話しをするためには供物台まで行く必要があるかもしれない」
 ラバミスの指先は、さらに山頂方向、西へと動いた。供物台という響きが、嫌悪感になって広がる。たくさんの命が奪われただろう場所なのだ。そして、後にフォースを産むエレンがクロフォードにさらわれたのも、そこでの出来事だった。
「ラバミス、もう一度聞くが。こちら側に対して、敵意を持つ者はいないんだな?」
「何度も言わせるな、そんな奴はいない。第一、一人二人いたとしても、種族の者は武器を持たないことを知っているだろう」
 何度も変わらない言葉を返してくるラバミスを、フォースはジッと観察していた。ラバミスも目を合わせたまま一歩も引かない。ラバミスが村の隅々まで把握しているかは分からないが、目の届く範囲のことなら信じてもよさそうだとフォースは思った。
 それよりも、一番の問題はシャイア神にある。何を要求されるのか分からないが、もしもそれを果たせなかったら、その時こそ種族は敵になってしまうだろう。
「じき出る。準備を頼む」
「分かった」
 ラバミスの返事を聞いて、フォースは部屋を出た。そこで待っていた騎士はブラッドだ。ラバミスの部屋を少し離れてから、フォースは口を開く。

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