レイシャルメモリー後刻
第16話 この街道の果てまで 41


「ディーヴァですら神の存在は薄く、自然は厳しくなる一方だ。作物も育たなくなった。あなたが戦士なら、きっちり責任を取っていただきたい」
「責任?」
 フォースは、強い意志を持った若者の言葉に、冷たい視線を浴びせた。半甲冑の威厳のせいもあってか一瞬ひるんだが、若者は再び口を開く。
「そうだ。神を呼び戻せないなら、減ってしまった分の作物や建材の調達、して欲しいことは山ほどある」
 若者が握っている拳にある力で、村での生活がひどく辛いのだろうと想像が付いた。この村では畑を増やすのも容易ではないだろう。だが、それはこの村の内部のことなのだ、干渉してはならないとフォースは思う。
「この村はライザナルか?」
 フォースは静かな口調でそう口にした。意表を突かれたのか、何度かまぶたをしばたいた後、若者はハッとしたように目を見開く。
「今、なんて言っ」
「この村はライザナルの一部かと聞いている」
「そんなわけがあるか!」
 若者の顔が一瞬で上気した。後ろにいる者たちも騒然としている。フォースは正面から村人たちを見据えた。
「だったら私とは何ら関係がないことだ。君たちでどうにでもしたらいい。ライザナルも神に手放されたのは変わりない」
「だから、ディーヴァの暮らしが悪くなったのは、あなたが戦士として神を排除したからだと言っている」
 若者は、分からない人だ、とつぶやきながら長いため息をつく。フォースはわずかに肩をすくめると、息で笑った。
「私が排除したのは、神の力だ。神ではない」
「そんなのは詭弁だっ」
 若者の言葉に、後ろにいる村人たちも、そうだそうだ、と口々に同調している。フォースは怒りが声に出ないようにこらえて口を開く。
「私にとっては、君たちの意見の方が詭弁だ。そのくらいなら、シェイド神を開放するのを邪魔する行動の方が、まだ理解できる」
 その言葉に、若者は目を丸くした。フォースはかまわずに話し続ける。
「そうすれば神の力は残り、君たちの暮らしが悪くなることも無かっただろう」
「かっ、神の邪魔など、できるわけがないじゃないか!」

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