レイシャルメモリー後刻
第16話 この街道の果てまで 44


 急な岩場を越えた場所に、供物台が見えてきた。フォースは下にあるはずの村を振り返ってみたが、坂にある凹凸の陰になっているのか、まったく見えない。岩場を避けて山を登ったら、ちょうど隠れるような場所になっているらしい。クロフォードが供物台に来てエレンを連れて行った時、岩場に踏み入れることはなかったのだろう。こんなに側まで来て村を見つけられなかったのは、このせいだったのかとフォースは感心した。
 女神の声は村を越えた辺りから、急激に近づいた。さすがに供物台近辺までくると距離を感じなくて済むらしい。
 供物を手にしていた兵士が供物台まで駆けていき、上に花や果物を乗せた。名を呼ばれているリディアは、ティオの上で胸に手を当て、祈りを捧げている。懐かしい光景だが、ただ懐かしんでいるわけにはいかなかった。
 ――リディア――
 女神の声が、一段と大きく響いた。供物台に目を向けると、その向こう側に虹色の光が浮かび上がってくる。ティオがリディアを地面におろしたのを見て、フォースはリディアの前に立ち、その光と対峙した。
「なんの用だ!」
 光に向かって叫んだフォースの声に驚き、ラバミスがフォースの肩をつかむ。
「無礼な! それに女神が答えるようなことは今まで無かっ」
「分かってる」
 それだけ答え、フォースはまた女神の光を凝視した。
 ――フォース、戦士よ――
 今度はフォースを呼ぶ女神の声が響いた。ただ答えが聞きたいと、フォースは祈るような気持ちになる。
 人間が人間として生きていくために神から独立したのなら、同等の立場として神とも会話が出来るはずだ。会話さえあれば、人は神から見放されたのではなく、独立したのだと確信できる。その思いが持てれば、今までのことは間違いではないと思えるし、これからのことも自分自身の正義に自信を持って貫いていける。
 ――リディアに降臨を――
 会話にはなっている。だがその言葉に、フォースは顔をしかめた。リディアも不安げな様子でフォースの腕に触れてくる。その手を取り、フォースは虹色の光にまっすぐ視線を向けた。
「理由を聞かせてくれ」

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