レイシャルメモリー後刻
第16話 この街道の果てまで 50
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窓から差し込んできた朝の光にまぶたを撫でられ、レイサルトは薄く目を開けた。マクラーンにある自室とは違う白い壁、そして、きらびやかな朝の光が目に入ってきた。
ライザナルの王族がヴァレスに訪れた場合、滞在する家は決まっている。フォースとルーフィスが二人で住んでいた家の内装を整えたモノだ。特に飾り立てていないためか、両親の私室と雰囲気が似ていると、レイサルトは来るたびに思っていた。
レイサルトがその家に到着して丸一日が経った頃、ハヤブサのコルが両親からの手紙を運んできた。用事が済み、ヴァレスにも寄るということだ。自分が口を挟む余裕もなく、すべてが丸く収まったらしい。
結局、水路や畑の視察に来ているサーディと、両親共に会うことになる。レイサルトがどういう行動を取っていたかも全て筒抜けだ。役に立てなかったと思う苛立ちは、自分が来ても意味がなかったと思う脱力感に変わっていた。
もう一度目を閉じて大きく息をついた時、ドアにノックの音が響いた。返事をする間もなく、ドアが開かれる。
「レイ、朝よ。いつまで寝てるの。母さん、出掛けちゃったわよ」
そう言いながら入ってきたのは、レイサルトの護衛に付いているバックスとアリシアの娘、ネブリカだ。まるで兵士のように髪を短く切ってズボンまではいているが、それが逆に女性らしさを引き立てている。一つ上なだけとは思えないほど、レイサルトには色っぽく見えた。
「いつまでって、夜が明けたばかりじゃないか」
レイサルトが文句を言うと、ネブリカは少し目を見開いた顔を向けてきた。
「あら、起きてたの? 珍しい」
「ここで寝坊をしたのは一度だけなのに、その言いぐさは」
レイサルトは近づいてくるネブリカを見て、腕だけ出して夜具を押さえた。ネブリカは怪訝そうな表情になる。
「そうだった? でも、ちゃんと記憶に残っているのは、寝坊した時のレイだけなのよ」
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