レイシャルメモリー後刻
第16話 この街道の果てまで 54
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フォースとリディア、子供の姿のティオ、そしてジェイストークを乗せた馬車はドナを通り過ぎ、ヴァレスに向かっていた。リディアは馬車に乗ると眠たくなるらしく、今もフォースの肩に寄りかかって瞳を閉じている。ティオは窓枠に腕を乗せ、不思議なくらい静かに、通り過ぎる景色を眺めていた。
「簡単な用事でしたので、私が来る必要はなかったのですが」
もしかしたらジェイストークがメナウルまで来るかもしれないと、フォースは予想していた。その予想通り、ジェイストークは手紙で済む知らせだけを持ってメナウルまで来たのだ。フォースは、ジェイストークがこのままいてくれてもいいかと、半ばあきらめていた。
「レイが心配だったんだな」
「お二人のことも心配でしたけど」
その台詞に一瞬言葉を失い、フォースはジェイストークに苦笑を向ける。
「分かったよ。もういい」
ジェイストークには、フォースとリディアがマクラーンを出たその三日後、子供達を連れ、あとを追ってもらっていた。現在、レンシオン、レファシオ、リヴィールはルジェナに滞在している。
リディアと一緒にディーヴァへ行っている間、レイサルトにはメナウルに、下の子供達はライザナルにいるようにと命令していた。それは、どうしてもしておかなければならない処置だった。ディーヴァから無事に戻ってきた今は、その制約から解き放たれているのだが。
「そういえば、アジルさんに聞きましたよ」
「なにをだ?」
「レイクス様がシャイア神とキスされていたと」
その言葉に噴き出しそうになり、フォースは口を手で覆った。ジェイストークは、いつもの笑みを浮かべず、むしろ真剣な顔をしている。フォースはため息をついた。
「これで二度目だが、からかわれているとしか思えない。悪質だ」
下がった視線の端にリディアの瞳が見え、フォースは思わず息を飲む。それに気付いたジェイストークが顔色を変えた。
「あ、あの、これは」
「シャイア様もフォースに恋愛感情を持っているのよ」
リディアは、ジェイストークの慌てっぷりに苦笑しながらそう言った。
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