レイシャルメモリー後刻
第16話 この街道の果てまで 58


「え? どうって……」
 レイサルトは意識して同じ言葉を返し、同じように苦笑した。聞きづらくなったのか、アリシアはレイサルトを見たまま、ため息をつく。
「グレイさん、この子、こういうところは母親似だわ」
 話を振られたグレイは、ワハハと声を立てて笑い出す。
「立場が立場だけに、母親似でよかったと思いますよ」
「そうだけど。真剣に聞いたのよ? 真剣な返事が聞きたいと思わない?」
 アリシアは、言葉の途中で開かれた扉に目を向けた。その向こうに見えたフォースとリディア、ジェイストークの三人が、バックスに促されて入ってきた。子供の姿のティオが一緒にいたが、外に残るつもりなのだろう、閉まる扉の隙間から、バックスと話を始めるのが見えた。
 ジェイストークがいることに少し驚いたが、アルトスには来ると分かっていたのだろう、お互いに薄い笑いを付き合わせている。レイサルトは両親を出迎えようと立ち上がった。
「アリシア、レイには無理に結婚相手を決めさせることはしない」
 そう言い切ったフォースの真向かいに立ち、アリシアは目の前の顔を指差す。
「無理は言ってないでしょ」
「自然がいいって言ったんだ」
 フォースは少し不機嫌そうな顔で、アリシアを見返している。自分のことでケンカでも始まりそうな雰囲気に、レイサルトは冷や汗が出た気がした。
「結婚するのは、何をするにも面倒だと微塵も思わない人ができてからだ」
「基準が、面倒、なの?」
 アリシアはフォースの言葉が意外だったのか呆気にとられ、その視線をリディアに移してニヤッと笑う。
「まぁ、あんたの場合は、それでよかったのかもしれないけど。普通そんなに障害のあることなんて無いわよ」
「障害だなど、特別なことだけじゃない。普段の生活から、なにもかもだ」
 目を逸らさないフォースに、アリシアは肩をすくめた。まぁまぁ、とグレイが割って入る。

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