レイシャルメモリー後刻
第16話 この街道の果てまで 60


 その言葉を聞いて、両親が越えてきた危険に思いを巡らせ、レイサルトはゾッとした。相手は神だ。何が起こるかなど想像も付かない。
 だが両親は、その困難を抜けてきている。サーディに聞いた話しによると、自分が生まれる前から何度も、何度もだ。両親が共にあきらめることがなかったからこそ、両親も自分も、こうしてここに存在している。
 ジェイストークが扉を開けたのが、レイサルトの視界に入った。顔を向けるのと同時に、サーディが入ってくる。
「揃ってるな」
「サーディ、元気そうだ」
 フォースはサーディに歩み寄り、ガッチリと握手を交わしている。
「フォース、リディアさんも無事でよかったよ。昔を思い出して、気が気でなかった」
「昔? そうか、気が気でなかったからなんだな」
 フォースが何を言っているか分からないのだろう、サーディはリディアとグレイの顔に視線を移した。
「一体なんの話」
 グレイに問いを向けようとしたサーディの額をフォースが小突いた。
「は?」
 サーディは額を押さえ、キョトンとしてフォースの顔に目を向ける。レイサルトには何が起こっているのかサッパリ分からなかったが、当のサーディもそうなのだろう。フォースの後ろでは、リディアがオロオロしている。
「気が気でなかったから、あんなことをしたってワケだ」
 フォースの言葉で、昔のことを思い出したのか、サーディは目を丸くした。
「や! あれは、その、すまんっ! 隠していたワケじゃないんだ、黙ったまま罪悪感を持ち続けるのが俺の贖罪だってグレイに言われて、それで」
 そこでグレイが吹きだした。苦笑にもなりきっていない、気の抜けた顔をフォースに向ける。
「あれか。フォース、またなんて昔のことを」
「ついさっき知った」
「本当にゴメン!」
 サーディが頭を勢いよく下げた。フォースはサーディの首の後ろをつかみ、上体を起こさせる。
「もういい」

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