レイシャルメモリー後刻
第16話 この街道の果てまで 61


「って、こんな起こし方。怒ってるんだろ?」
 サーディは顔色をうかがうようにフォースを見た。フォースは肩をすくめる。
「ちょっとはな。でも、それ以上に俺自身にもだ。原因の一端は俺にもあるわけだし」
「フォースは嘘をついていないよ」
 そう言いながら、扉の中を通ってティオが姿を現した。レイサルトに目を止めると、側に駆け寄ってくる。
「どこから連れてきたの?」
「え? 連れて、って一体……」
 レイサルトが周りを見回しながらそう答えると、ティオはニッコリ笑ってレイサルトの中を背中の方へと突き抜けた。エッと思って振り返ると、ティオがいつの間にか、レイサルトと同い年くらいの女の子の手をつかんでいる。
「イヤよ、放してよ」
「この人は俺の友達の子供。だから駄目」
「えぇ? 友達ぃ?」
 ティオは疑わしげな目をフォースに向ける娘を引っ張り、扉に向かって歩き出した。
「ティオ、その娘、もしかして……」
 困惑顔のフォースに、ティオは、あったりぃ、と元気に返事をした。
「俺、そろそろリーシャを探さないと」
「あ? ああ、ありがとう」
「リディアも元気でね」
 リディアは、ありがとう、と言いながら、小さな子にするようにティオを抱きしめて頬にキスをした。
「じゃ、またね!」
 ティオは軽く手を振ると、そのまま扉を抜けて出て行った。
 少し重たい沈黙が残っているのを、レイサルトは不思議に思った。
「もう会えなくても、きっといつまでも元気でいてくれるわね」
 リディアの言葉で、妖精は歳を取らないということを、レイサルトは思い出した。ティオとは幼い頃に二度ほど会っただけだ。会いに来る間隔を考えれば、ティオと両親とは、もう会うことはないのかもしれなかった。

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