レイシャルメモリー後刻
第9話 気力能力適材適所 3


「城を閉鎖して、兵にも捜索の命を出してまいります」
 俺がうなずくと、イージスは廊下を奥へと駆けだしていった。あまり騒ぎ立てたくはないが、リディアに何かあってはたまらない。イージスを止めることはしなかった。
 庭に出ると、一人の庭師が目に付いた。庭師なら上下はあってもノルドと所属が同じだ。何か知っているかもしれないと駆け寄る。
「レ、レイクス様っ!」
 俺に気付いて驚いたのか、庭師は深く頭を下げた。こんな姿を見ると、自分がライザナルの皇太子なのだと改めて思い出してしまう。でもそんなことを言ってる暇はない、庭師の態度を気にせずに問いを向ける。
「リディアを探しているんです。オルニが一緒かと思うのですが」
「はい、ここを通って行かれました」
 庭師が何か話してくれると思ったが、緊張しているらしく、頭を下げたまま固まっている。
「どこへ行ったか知っていたら、教えてくださいませんか?」
 そう言って顔をのぞき込むと、庭師は跳ねるように真っ直ぐになって口を開いた。
「ノルドのことを聞かれましたので、馬小屋にいると伝えましたら、そ、そちらの方へ」
 目を見ながら絞り出したような震える声は、嘘をついているようにも聞こえない。
「ありがとう。行ってみます」
「あ、あの」
 形だけの会釈を返して離れようとした俺に、庭師が声を掛けてきた。
「前にノルドが、リディア様がオルニの嫁になるとか言ってい」
「そんなわけがないだろう!」
 思わず大声で言い返しながら向き直ると、庭師は身を守ろうとしてか、腕で顔を覆って身体を引いた。
「いえ、で、ですから、言っていたのをき、聞いただけで、本気にしたわけでも……」
 尋常じゃない怖がり方に、脅かしてしまったかと、俺は軽く頭をさげる。
「すみません、申し訳ない。教えてくださってありがとうございます。後でまたお話をうかがわせてください」
 敬礼が出そうになるのをこらえ、きちんと頭を下げてから、俺は馬小屋へ向かって急いだ。オルニがリディアを狙っていることは間違いない。サッサと見つけ出さないと、とんでもないことになりかねない。落ち着いていようと思いつつも、身体は勝手に駆けだしていた。
 馬小屋の前には女性が二人、水桶を側に置いて立ち話をしていた。
「まぁ領主様、どうなさいましたか?」
 息を切らせて駆け寄った俺に、女性たちは不思議そうな顔を向けてくる。
「リディアを探しているんだけど」
 女性たちは笑顔を向き合わせると、にっこりと笑いかけてきた。
「ほんの少し前にいらっしゃいましたよ」

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