レイシャルメモリー後刻
第2話 起きて見た夢 4


「だけど? 他にも何か?」
「特にこれってコトじゃないのだけど。なんだか空気が重くて怖いの。でも、まさか部屋を一つにしてくれとは言えないものね」
 俺は、恥ずかしげに浮かべた微笑みを抱き寄せて腕の中に包み込み、軽く閉じたまぶたへ、滑らかな頬へ、柔らかな唇へと、触れるだけのキスを落とした。
「フォース……」
 薄く開いた瞳からの視線と、白くしなやかな腕が絡みついてきて、俺は背に回した腕に少しずつ力を込め、もう一度唇を重ねた。
 リディアの手が俺の存在を確かめるように背を移動する感触に、思わずキスを深くする。頬から首筋に唇を這わすと、きめの細かいすべらかなノドが仰け反って扇情的なラインを描き出し、上気したせいでいつもより赤い唇から短いため息のような息が漏れてくる。
 ドアの方からいきなりカタッと音がして、リディアがビクッと身体を震わせた。不安げに見上げてくるリディアの頬を撫でる。
「見てくる」
 そう言って身体を離すと、リディアは両腕で自分の身体を抱くように抱え込んだ。
 リディアをベッドに座らせ、ランプを手にすると、俺はドアまで行って立てかけていた短剣を手にし、鍵を外してドアを開けた。廊下に出て左右に明かりをかざしてみたが、人が隠れられそうな場所もなく、何も変わったところはない。
「フォース?」
 弱々しげなリディアの声に、俺はドアに鍵をかけ、もう一度短剣を立て掛けてリディアの所へ戻った。
「どう?」
「いや、別になにも」
 リディアは不安げな表情のまま、ランプを台の上に置いた俺を見上げてくる。
「ねぇ、明日、なるべく早く出ましょう。日が昇ったらすぐにでも」
「ああ。そうしよう。ジェイをあまり待たせるわけにもいかないしね」
 俺の言葉に、リディアはいくらかだが安心したように息をついた。
「じゃあ、サッサと寝なきゃな」
 コクンとうなずいたリディアを引き寄せ、そっと唇を合わせる。
「ありがとう。おやすみなさい。真ん中のドア、開けておいてね」
 了解、と答え、もう一度キスをする。ドアのところでリディアに手を振って、俺は隣の部屋へと入った。

   ***

 サッサと寝なければいけないと思ったからではないだろうが、なかなか寝付くことができなかった。今はもう寝るのを諦めて、身支度をし、剣も身に着けている。
 窓の外はまだ闇で周りがよく見えない。だが、雨はあがっているらしかった。
 ふと、リディアの息遣いが聞こえた気がした。ランプは二つともリディアの所だ。俺はいくらか漏れてくる明かりを頼りに、リディアのいる部屋へと入った。

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