レイシャルメモリー 3-05
「口説かれたりしてないよ」
フォースは、振り返ったサーディに宴の会場を指さして見せた。
「あそこにいたら、視線が凄くて。ちょっと外の空気にあたりたくて、付き合ってもらったんだ」
「視線?」
サーディはフォースの格好を上から下まで見て、肩をすくめる。
「そうか。宝飾の鎧に二位のマントじゃ、なおさら目立つか」
「主役の相手だしね」
フォースの駄目押しの言葉に、サーディは納得してうなずいた。
「それにね」
スティアがサーディに軽く肩をぶつける。
「リディアが相手ならまわりが目に入らないのかもしれないけど、私が相手だとよそ見してるから余計に気になるみたい」
そう言うと、スティアは薄笑いを浮かべた。サーディは、さも可笑しそうにアハハとおおらかに笑う。スティアが追求されないように話をそらした結果がこれだ。フォースはため息をついて、左手で顔の半分を覆った。その顔をスティアがのぞき込む。
「神殿の中庭にね、リディアがいるの」
フォースはその言葉に息をのんだ。
「え? いるって、どうして」
「途中で解放するって言ってあるの。今日はもう、お兄様といるからいいわ」
そう言うと、スティアはにっこり笑ってサーディの腕を取る。サーディは肩が揺れるほどの苦笑をした。
「俺とか? 寂しい誕生日だな」
「人のこと言えないでしょ。いいわよね?」
「そりゃ、駄目だなんて言ったら、リディアちゃんが可哀想だよ。へぇ、一応考えてるんだ」
サーディの言葉に、スティアは大きなため息をついた。
「いくらなんでも、ただ借りてるのは心苦しいでしょ」
得意げなスティアに、フォースは眉を寄せる。
「もしかして、具体的な時間の指定無しにか?」
「してないわよ。だって、どうなるか分からないじゃない」
スティアの言葉に、フォースは呆気にとられ、サーディと顔を見合わせた。サーディがスティアの顔をのぞき込む。
「じゃ、待っているかどうか分からないじゃないか」
「待ってないわけ無いじゃない」
スティアとサーディは、難しい顔で見つめ合っている。このまま二人の言い合いを聞いていても、気が滅入るだけだとフォースは思った。
「とにかく行くよ。じゃ」
フォースは不安を押し殺すと、ろくに挨拶もせずにバルコニーを後にした。