レイシャルメモリー 3-04
フォースは思わず片手で顔を覆った。信じろと言う方が間違いだと思う。認めているのかいないのか疑わしげな顔のフォースに、レクタードはシルバーの宝飾品を差し出した。それは球形をしていて、五本の鎖で鎧に付ける金具とつながれ、落ち着いた光を反射している。見覚えのある形に、フォースは眉を寄せた。
「これはサーペントエッグ、一般的にはエッグと呼んでいるモノです。材質は違うでしょうが、あなたも持っているはずです」
レクタードは、球形の部分の細工に爪をかけ、エッグと呼んだそれを開く。ただの宝飾品と思っていたフォースは、それが開くことに驚いて目を見張った。レクタードはエッグの内側を、フォースに見やすいように差し出す。
「母は違いますが、これがあなたと私の父です。持ち主の両親が描かれているんですよ。こちら側の紋章は王家のものです」
その球形の内側左には金で細工された紋章が浮き彫りになり、右には細密肖像画が描かれていた。確かにレクタードと同じ色の髪と瞳の女性が、豪華な礼装の男と一緒に描かれている。そしてその男、皇帝クロフォードだろう人物は、当然のようにフォースと同じ髪の色をしていた。エッグの内側を見たことはなかったが、鎧に付ける金具がまったく同じ形であることを、フォースはハッキリと覚えている。そしてそれはエレンが残したモノが確かにサーペントエッグというモノなのだと、フォースに語りかけていた。
黙り込んだままエッグを凝視しているフォースに、レクタードは微かな笑みを浮かべる。
「あなたのエッグの精密肖像画も同じ画家が描いたそうです。見ていただければ分かります」
「ライザナルでは身分証明を兼ねたお守りのようなモノなんですよ」
ジェイストークが、レクタードの隣から付け加えた。メナウルでは星の形に削った青い石が、ペンタグラムというお守りとして普及している。その石をリディアと交換していたフォースは、お守りと言う言葉を聞いて思わず喉元にあるペンタグラムに手をやり、リディアの名前を呪文のように想った。今までのパニックが嘘のように気持ちが落ち着いてくる。
「こんな昔のことを、どうやって調べたんだ?」
フォースが観念したように向けた疑問に、ジェイストークは軽く頭を下げた。
「レイクス様の過去をたどらせていただきました。簡単でしたよ。関わった方は誰もがレイクス様を覚えていましたし、エレン様の名前もすぐに出てきましたし、ドナでのことも」
ジェイストークは、フォースが視線をそらし、眉をひそめたのを見て口を閉ざした。フォースは一呼吸置いてすぐにジェイストークと目を合わせる。
「で? いったい俺に何をしろと?」