レイシャルメモリー 2-06
アリシアは頭を上げてフォースと視線を合わせる。
「でも、私が言わなければ、」
「他の誰かに聞いただろ」
フォースは割り込むように言葉をかぶせると、肩をすくめてアリシアに苦笑を向けた。
「実際、一人から聞き出したような口ぶりじゃなかったしな。それに俺だって母の墓のこと言っちまったんだ、もし責めたくったって責められねぇだろ」
アリシアは、それに気付いてアッと声に出し、慌てて口を押さえる。
「そんなことより、ジェイって、ジェイストークのことか?」
フォースが口にした名前にビクッと肩を震わせて、アリシアは視線をそらした。フォースは胸騒ぎをそのまま口にする。
「まさか、何かされたのか?」
「違、何もないわ、私が勝手に信じただけ、それだけだから」
目を合わせずに答えたアリシアを見て、フォースは顔をゆがめる。
「ごめん」
「ちょっと、やだ、何言ってんのよ、ホントに何もなかったわよ。もし何かあったって、それこそフォースのせいなんかじゃないわ、冗談はやめて」
食ってかかるアリシアの態度に、フォースはやはり何かあったのだろうと思いつつ両手の平を向け、分かったと繰り返した。アリシアはフゥッと息をつくと、フォースの目をしっかり見据える。
「行く、つもりなの?」
「ちょっと前まで迷っていたんだけど。今は行かなきゃならないと思ってる」
自分の気持ちを確かめたかのようなフォースの言い様に、アリシアは視線を落とした。フォースは側にあるシャイア神の像を見上げる。
「母の墓一つのことでドナに軍を集めてしまう人から逃げるなんて容易じゃないよな。メナウルにしても迷惑どころの話じゃない。クロフォードが来るかもしれないってことは、交換条件の提示も近いだろうし、今はそいつをサッサと聞きたいくらいだ」
「行かないで」
意外な反応に耳を疑いフォースが目を向けると、アリシアは変わらずに、うつむいたままそこにいた。
「それが駄目なら、帰ってくるって約束して」
その言葉を聞き、フォースはライザナルに行こうという決心をアリシアに話してしまったことを後悔した。フォース自身、母の墓の場所を明かしてしまった後悔を持つのと同じように、アリシアがジェイストークに話してしまったことへの罪悪感が抜けていないのだと思う。余分に辛い思いをさせてしまっているのだろうと眉を寄せたフォースの両腕を、アリシアが掴んだ。
「お願い、約束すれば、あんたなら必ず」
ドンと神殿入り口の扉が鳴り、それから大きく開かれた。バックスだ。
「バックス、どうした?」
フォースはキョトンとした顔でバックスにたずねる。
「いや、何かゴソゴソ聞こえるって言われてな」
「話をしてただけだよ」