レイシャルメモリー 4-03
「そうね。どけてくださる?」
ユリアはバックスを睨むように見ると、バックスを避けて水をリディアの所に運んだ。
「どうぞ。毒は入ってないから安心して」
眉を寄せたリディアに、ユリアは嘲笑を向けた。
「思うつぼなんじゃない? 結局、永遠に独り占めね」
ユリアの言葉に目を見張り、リディアはガタッと椅子の音を立てて立ち上がった。サーディが二人の間に入る。
「君はまだそんなことを」
サーディに言われた言葉に、ユリアは口をつぐんでリディアに背を向けた。リディアはサーディに首を横に振って見せると、ユリアの後ろ姿を見つめる。
「生きてさえいれば会えるかもしれない、もし会えなくても、フォースはライザナルで幸せに暮らせるかもしれないのよ? それも全部駄目にしろって言うの?」
背を向けたままのユリアに歩み寄ろうとしたリディアを止めようと、ティオがリディアの手を引く。
「リディア、ねえ、リディアが遠いよ。休まないと駄目だよ」
ティオの手が別世界にあるように思うのに、その力を大きく感じ、リディアは足を止めた。だが、頭の中にもやが広がっていくのにかまわず、言葉をつなぐ。
「そんなにフォースを自分のモノにしたいの? でももし、こんなやり方で願いが叶っても、あなたが得られるのは愛情じゃなくて支配したっていうただの優越感よ。辛いのは変わらないわ。だからもうやめて。フォースに虚しい、寂しい思いをさせないで。お願い……」
ティオは、石になったように動かないでいるユリアに、不満げな目を向けた。ユリアはティオを見て、視線がうつろになっているリディアの様子に気付き、ハッとして歩み寄る。
「どうしたのよ?」
「同じ毒で逝けるなら、それで……」
リディアが小さくつぶやいた言葉に、サーディは顔色を変えた。
「何言ってる!」
サーディは、リディアの身体から力が抜けていくのを見て、横から支えとようと手を伸ばす。
「おい、しっかりしろ!」
サーディの反対側で大きさを増すと、ティオはサーディが支えきれなくなったリディアを、そっと抱き上げた。
「フォース、そこにいたの……」
リディアの小さなつぶやきが、ティオの耳に届いた。リディアの視線が階段の上に向く。ティオがリディアをのぞき込むと、確かにリディアの意識にはフォースが存在している。だが、驚いて階段を見上げたティオの目には、何も映らなかった。