レイシャルメモリー 3-08


 フォースの暗い表情に、ジェイストークは柔らかい笑顔を向けた。
「リディアさんのことは、連絡が取れましたら尋ねてみます」
 その言葉に、フォースは思わずジェイストークに視線を向けた。自分の手が勝手に、なくしてしまったペンタグラムを探っているのに気付き、決まり悪い思いに目をそらす。
「あ、そうそう、レイクス様、これを」
 ジェイストークは、上着の内側に手をやっると、ペンタグラムとリディアが手当をしたときの布を探り出した。フォースはそれを見て、息を飲む。
「申し訳ありませんが、このデザイン故、鎖を長くしてあります。くれぐれも陛下やマクヴァル殿の、お目に入らないようにお願いします」
 アルトスが歩み寄ってきて、差しだしたペンタグラムと布地に、横から手を出した。ジェイストークは慌ててペンタグラムを持った手を引く。
「ジェイ、その青い石はシャイア神のお守りだ、ライザナルで身に着けていようなどと背徳行為だろう」
 アルトスの言葉に、ジェイストークは肩をすくめた。
「これはただのペンダントだ。最初からシャイア神の象徴ではない。そうですよね?」
 ジェイストークに向けられた確認に、フォースは目を丸くした。
「どうして、それを」
「喉元に触れるのが癖になってましたよね。少し前にもしていらしたでしょう。メナウルの兵から聞きました」
 その理由に、フォースは自分の行動と、噂好きな兵士たち、そしてそんなことまで調べ上げているジェイストークに呆れた。
「リディア様は、早く行ってください、必ず助けて。と、そうおっしゃって、レイクス様をライザナル側へ連れてくるのを阻止しようとしたバックスという騎士を止めてくださったんです」
 フォースには、自分を救おうと背中を押してくれたリディアの思い、とめようとしたバックスの気持ち、両方が嬉しかった。ただ、リディアがメナウルで責められてはいないかと、フォースの胸に不安が湧き上がってくる。ジェイストークは、フォースの気持ちを知ってか知らずか、笑顔のまま言葉をつなぐ。
「感謝しています。リディア様はレイクス様を救ってくださった恩人です。もし生きていらして、こちらへ来ていただく時、レイクス様がリディア様の残されたモノを何一つ持っていなかったでは気がとがめますし」
 来ていただくなどと丁寧な言葉だったが、拉致のことを言っているのだろう。ジェイストークは、相変わらず優しげな笑顔をフォースに向けている。
「しかし……」
 納得できないでいるアルトスにも、ジェイストークはそのままの笑顔を向けた。
「アルトスにとっても、恩人だろう。レイクス様が命を落としていたら、今頃は処刑だ。なんなら、アルトスが持つか?」
「は? だ、駄目だ、それは俺の」

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