レイシャルメモリー 2-04
ジェイストークもフォースの顔色をうかがうようにのぞき込む。フォースは身体の中を見るように瞳を閉じた。
動悸は相変わらず続いている。そして、その動悸を押さえようという力が働いているのを感じた。それが左腕の布からだと気付き、フォースは袖をまくった。布が虹色に発光している。恐る恐る触ってみたが、特に異変はない。だが。
「守られてる……?」
「レイクス様?」
ジェイストークがフォースの左腕、布を巻いた部分に手をやり、触れた直後に手を引いた。指先からただれが広がっていく。
「ジェイ?!」
レクタードの叫び声でそれに気付き、フォースは驚いてジェイストークの腕をとった。その掴んだ部分から、ただれが徐々にひいていく。
「い、痛いじゃないですか。なんの魔法です?」
「分からない。でも……」
フォースはそのまま腕を掴んでいた。ジェイストークの手は、何事もなかったかのように、指先まで完全に戻っていく。少しずつフォースの動悸も収まり、存在を主張していた布の感覚も消えた。
「まだ痛いか?」
「いえ、もう」
その言葉を聞いて、フォースはジェイストークの腕からゆっくりと手を放した。ジェイストークは、なんの跡も残っていない手のひらと手の甲を交互に眺める。
「溶けて無くなるかと思いましたよ。なんだったんです?」
「だから、分からないんだ」
眉を寄せたフォースの表情を見て、ジェイストークの顔色が変わった。
「じゃあ、今治ったのは……」
「そう。偶然」
フォースがうなずくと、ジェイストークは引きつった顔で元通りになった手を見つめ、握ったり開いたりを繰り返す。
「でも、いくらかは分かっていらっしゃるんでしょう? その布、一体なんなんです?」
「なんだと言われても。シャイア神の力を持っているらしいとしか、言いようが無いんだけど」
フォースは少し口ごもると、一度大きく息を吐いた。
「事実だけ話すよ」
フォースは、ええ、とうなずいたジェイストークと向き合う。
「最初、身体がいきなり熱くなった。その変な熱が引いても動悸が収まらなくて。どうもこの布から熱が放出されているようだったから、どうなっているのか見てみたんだ」
一息置いたフォースのあとをついで、ジェイストークが口を開く。
「光ってましたね。前の時と同じ光です」
「その光が、シャイア神が力を使う時に放出される光なんだ。で、触ってみた」
「フォースが触っても、なんともなかったよね?」
レクタードの問いにうなずき、フォースはジェイストークに視線を向けた。
「前に光った時には触った?」
「ええ。フワッと温かくなって気付いて、それで確かめたら光っていましたので」