レイシャルメモリー 2-05
三人の視線が交錯した。レクタードのノドがゴクッと音を立てる。
「どうして今回こんな……」
「違うのは、俺が身に着けていなかったこと、その手の状態……」
フォースの言葉に、ジェイストークはじっと自分の手を見ながら考え込んだ。
「そうですね……。そういえば、想像の部分のお話しは、まだうかがっていませんが」
フォースは、本当にそうなのか分からないけど、と前置きして口を開く。
「異変を感じた時、それをこの布が取り除いてくれていると感じたんだ」
「それは、レイクス様が私の手に触れていた時に、どうしてだか私もそう思いました」
ジェイストークは、眉を寄せたまま顔を上げる。
「そういえば、前に布が光った時も前後して、レイクス様、うなされていらっしゃいましたよ」
「身に着けていれば、邪気とかそんなモンを発散してくれる? なんだかお守りみたいだね」
レクタードはそう言うと、一瞬笑いかけてから表情を凍り付かせる。
「それって、フォースがなんらかの攻撃を受けていて、シャイア神に守ってもらってるってことか?」
レクタードの心配げな顔に、フォースは、そうだな、とつぶやくように言って苦笑した。
シャイア神が自分を守ろうとするなど、フォースには信じられなかった。だが、理由は分からないが、現実がそうなのだ。レクタードは、顔を引きつらせたまま言葉を続ける。
「でも、誰にだ? そんな魔法みたいな力を持っているなんて。まさか、シェイド神じゃ?」
「は? ちょっ、ちょっと待ってください。まさかシェイド神がそんな。薬の影響が残っているということも考えられますし、もしくは呪術ということも」
呪術という陰湿で怪奇的な響きに、フォースは眉を寄せた。
「呪術? そんなものがまだ残ってるのか?」
「いえ、話しに聞いただけですが。でも、シェイド神がそのようなことをするなど、有り得、ません……」
自信を持てなかったのか言葉が弱くなったジェイストークに、フォースは苦笑してうなずいて見せた。
「俺も、シェイド神だとは思えないよ。神ともあろうものが、たかが人一人を相手にするなんて」
「すみません」
頭を下げたジェイストークの信仰心が意外に厚いことを、フォースは否応なしに感じていた。ジェイストークは普段なら、断定できないことは有り得ないなどと言い切ったりしない。なんでも追求するジェイストークが、多少なりとも疑惑を振り切ってしまえるほど、ジェイド神を信仰しているのだ。
考え込んでいたレクタードが、訪れた沈黙に顔を上げる。
「攻撃しているのが誰にせよ、リディアさんが降臨を解かれる前に、なんとかしないと大変だな」
「そうですね。場合によっては一年後リディア様に来ていただくのも、延期しないことには」