レイシャルメモリー 1-09
「じゃあライザナルに落ちたシアネルの報謝ってのがエレンさんで、メナウルに落ちたシアネルの青き剣が、フォースのことだろうか」
「それっぽいよな。しかも神の意志剣形成し青き光放たん、その意志を持って神の影裂かん、だなんて、完璧フォース宛じゃないか?」
サーディの言葉に、そうだな、と同調し、グレイは顔をしかめた。
「フォースの、知るかっ、って顔思い出した」
「おいおい……。今度あっちの人間と会う時にでも、フォースに伝えてもらわなきゃな」
サーディの苦笑に、スティアがうなずく。
「少しでも繋がりを残しておいてよかったわよね。……、でも、だから、行かせてしまうようなこと……」
顔をしかめてうつむいたスティアの背に、リディアはそっと手を添えた。
外へと続く扉に、ノックの音が響いた。
「バックスです」
名乗った声に、側に立っていたルーフィスが扉を開けると、バックスはルーフィスに敬礼を向けてから部屋に入ってきた。サーディが立ち上がる。
「もしかして、何か連絡が入ったのか? いいタイミングだ」
サーディは、同じく敬礼を向けてくるバックスに笑みを見せた。だが、バックスは浮かない表情を向け、眉を寄せたまま頭を掻く。
「どうした?」
訝しげなサーディに、バックスは一つ息をついてから口を開いた。
「色々話しはしたのですが。その中に、レイクス様のご希望でリディア様にライザナルへ来ていただきたいので使いを寄こす、マクラーンで待っていると伝えて欲しいとあったものですから」
遠慮がちに言ったバックスの言葉に、スティアは心配げにリディアの表情をうかがった。リディアは驚いて丸くしていた目を伏せ、ため息をつく。グレイとサーディは顔を見合わせ、冷笑し合った。
「どう思う?」
グレイの質問に、サーディはフンと鼻で笑う。
「本人だったら面白いんだけどな。いくらなんでも辛抱足りなさすぎ」
「同感。本人とは無関係だな」
そう言うと、グレイはリディアに視線を向けた。リディアはうつむいていた瞳を上げると、グレイにしっかりとした視線を返す。
「私、約束通りフォース自身が迎えにきてくれるまで、どこにも行きません」
言い切ったリディアにうなずいて見せると、グレイは頬を緩めた。
「それがいい。フォースが約束を破ったことはなかったからね」
グレイに同調するように、サーディもうなずく。リディアには、二人がフォースを少しも疑わずにいてくれるのが嬉しかった。