レイシャルメモリー 3-03


 クロフォードは訝しげにフォースをのぞき込んだ。フォースは身体ごとクロフォードに向き直る。
「シェイド神の声を聞いたのは、俺に向かって、戦士よ、と言った一度だけです。他にシェイド神は一切声を発してはいません」
「マクヴァルはシェイド神と話しをしていない、と申すか?」
 クロフォードの問いに、はい、とフォースはうなずいた。クロフォードは口をつぐむと、何か考え込むように眉を寄せる。
「エレンも、そう言っていたことがあるのだよ」
 そこで言葉を切ったクロフォードに、内心でいつの話しだと突っ込みながら、フォースは黙ってクロフォードの様子を見ていた。
 確かに神の世界など、人間からすれば想像もつかない。神の守護者と呼ばれる自分ですら、普通の人より理解していると思えるほど神に近づいてはいないのだ。ましてや人間同士でさえ、直接言葉で聞かないと、いや、聞いてなお理解できないことすらあるというのに。
「何が起こっているのか聞きたいんです。直接シェイド神と話しをさせてください」
 フォースは、考え込んでしまったクロフォードに向かって口を開いた。クロフォードはますます難しい顔つきになる。
「ジェイストークから状況を聞いたと言っただろう。直接会うのは危険すぎる。巫女を差しだしてからだ」
 あくまでも変わらないクロフォードの物言いに、フォースは顔を歪めた。
「では、今の状況は危険じゃないと?」
「会うよりはまだマシだと言っておるのだ」
「巫女を差しだしてシャイア神の力が無くなることを、危険だと思ってはいただけないのですか?」
 フォースの言葉に、クロフォードは気持ちを落ち着けるかのように、ゆっくりと息を吐いた。
「レイクス、ここはライザナルなのだよ。私も他の人間も、みなシェイド神を信仰してきたのだ。いきなり考えを変えろと言われても」
「しかし、マクヴァル殿はシェイド神ではありません」
 クロフォードは虚をつかれたようにフォースに目をやった。その瞳を見つめ、悲痛な顔つきになる。
「私はただ、お前までをも失いたくないのだよ」
 この言葉を聞くたび、フォースはクロフォードに盾突きたくなってしかたがなくなる。これ以上の言い争いを避けようと、フォースは続けたい言葉を飲み込んだ。
 クロフォードが自分を離さないと思っているうちは、間違いなくメナウルには帰れないのだ。クロフォードの望みと、自分の望みが対極の位置にあることを、嫌でも思い知らされる。

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