レイシャルメモリー 2-03


「心変わりを疑っている訳じゃないんだ」
 フォースはニーニアに気付かぬふりで口を開いた。
 リディアなら、本当にいつまでも変わらぬ気持ちでいてくれるのではと思える。だが、それとは別に、気持ちはいつでもざわついている。
「今何をしているか知りたい。昨日はどこで何をしてた? その前は? もう何日分リディアを知らない? 居ても立ってもいられない」
 寂しげに眉を寄せたフォースに、レクタードは肩をすくめた。
「感情過多だな」
 その言葉に一瞬目をやり、フォースは、そうかもな、とつぶやく。レクタードは苦笑した。
「そんなことを言っていたら、王位継承権のある者として威厳を保っていなければならない。なんて父上にどやされそうだ」
 その光景が簡単に頭に浮かび、フォースはノドの奥でクッと笑う。
「頑張れよ」
「おい。フォースもだ」
 レクタードはフォースに言い返すと、笑いをこらえている。フォースはレクタードに力の抜けた笑みを向けた。
「だから継承権なんていらないって。正直、レクタードもスティアも凄いと思うよ。俺には無理だ」
 そう言いながら何気なくアルトスに視線をやると、やはり忌々しげな顔をしてフォースを睨みつけていた。
 反対側にも目を向けると、皇族警備の新人騎士は、フォースの言葉が信じられなかったのだろう、不審げにフォースを見ている。目を合わせたまま思わずイタズラに微笑んでみせると、騎士は思い切りギクシャクと視線を逸らした。
 フォースは立ち上がり、大きくノビをする。
「さてと」
「戻るのか? それとも何かあった?」
 レクタードの問いに、ああ、とうなずいたフォースを見ていたのだろう、アルトスが向かってくる。
「デリック殿と会う約束なんだ」
「へえ? デリック殿と?」
 意外な名前だったのだろう、レクタードは首をかしげた。側まで来たアルトスが、フォースと向き合う。
「デリック殿と会って何をする気だ? まさか」
「は? 会いたいと言ってきたのは向こうだ。俺が諜報部を使って裏から何かするとでも思ってるのか?」
 胡散臭げに返したフォースに、アルトスは緊張を解いたのか、小さく息をついた。
「そうだな。お前にそんな頭はない」
「てめぇは……。メナウルのことは話すつもりはないって言ったんだけど。いったい何の用だか」
 フォースはレクタードに軽く手を上げ、じゃあまた、と挨拶する。

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