レイシャルメモリー 4-03
すっかり忘れていたが、初めてジェイストークを見かけたのは、ヴァレスの神殿周辺警備の任に就いたゼインの横だった。いやににこやかな顔をして隣に立っていたのが記憶によみがえる。
「城都で彼らがケンカしているのを聞きましてね。その時に祖父と孫なのだと知ったんです」
ゼインとクエイドのケンカなら、直接関係のない自分でさえ何度か聞いたことがあった。ゼインの隊にいれば、その機会も増えるに違いない。
「なんだか、メナウルのことでさえ俺よりジェイの方が詳しいな」
その言葉に、ジェイストークはノドの奥で苦笑したような息を漏らす。
「ただ、一時こちらに出入りしていたクエイドの息子は、メナウルに行ったきり行方不明らしいのですが」
「処刑されてる。ドナの犯人だそうだ」
「そうなんですか?!」
ジェイストークは足こそ止めなかったが、驚いた目を一瞬フォースに向けた。
「クエイドとゼインが祖父と孫なら、その間に挟まった人間に興味が向きます。私が調べた限りでは、その後の行動が何も出なかったモノですから」
「さっきゼインがそう言ってたんだ」
犯人が処刑されたのは知っていた。自分が誰なのか口を割ることもなく、ただ毒を入れたのは自分でライザナルの人間だと声高に叫び、抵抗することなく処刑されたと聞く。
ただ、祖父に反発し、ライザナルにいいように使われた末に処刑されたとゼインが言ってはいたが、それが処刑された事実とどう繋がっているのかは、推測の域を出ない。
「結局、どういう理由で毒を入れたかは分からずじまいだ」
「あとはクエイドが何を知っているかでしょうね」
ジェイストークの言葉に、フォースは、そうだな、とうなずいた。後は帰りさえすれば、すべてを知ることができるかもしれない。
ジェイストークがため息をつく。
「こちらの資料には、クエイド本人の記録はないですが、クエイドの父と息子の記録があったんです。こちらはできる限り利用しようとする、彼はなんとかバレないようにと躍起になる」
「それでゼインを使ったと……」
「多分そうでしょうね」
ジェイストークの暗い声に、フォースは大きく息をついた。どこかでその二世三世といういましめを、解くことはできなかったのだろうか。
クエイドが先の皇帝陛下に打ち明けることができたなら。その息子がクエイドの恐れを理解できたなら。ゼインが騎士になることを承諾しなかったなら。
何もかも今さらだとは思う。だが、彼らのうちの一人でもそれを実現していれば、ここまでの悲劇にはならなかっただろう。
「クエイドを利用した時点で、そのケガはやはり私の責任ですかね」
ジェイストークのつぶやきに、フォースは眉をしかめ、声を大きくする。