レイシャルメモリー 1-06


「それなら安心だ。神殿が嫌われていると、何を言われるかが不安だからな」
「もっと早くに、その不安を解消してくださればよろしかったのに。ただお会いいただくだけで誤解も解けたはずです」
 ジェイストークのこの言い方だと、神官としての立場に対しての信頼は薄れていないだろうと、マクヴァルには思えた。
「それは神殿側も同じだ。早くに巫女を差しだしていただければ、ここまでこじれることはなかった」
 マクヴァルはいつもの調子でジェイストークに言葉を返した。
「何かありましたら、お知らせしますよ。警備が厳重ですから、もう何も起こりようがないとは思いますけれどね」
「何も、事故を期待しているわけでは無いぞ」
 マクヴァルは薄笑いを浮かべると、軽く礼をして廊下の角を曲がった。
 ジェイストークとテグゼル、ニーニアは、マクヴァルが来た廊下を進んでいく。三人の足音が少し離れてから、マクヴァルは廊下の角に戻り聞き耳を立てた。
「そういえば、神の力はまだレイクス様に及んでいるのだろうか」
 その事実は、皇族側近の騎士にだけは知らされていると聞いている。マクヴァルも、どうにかやめていただけるようにお願いすると、形だけは確約していた。
「どうなのでしょう。最近はレイクス様自らが、何もかもお隠しになっているご様子ですので、なんとも」
 やはり女神の媒体のせいで、あまり効き目はないようだとマクヴァルは思う。だが、その力を送っているうちはシェイド神の存在を強く感じずにはいられないだろう。
「ケガって、ひどいの? 大丈夫なの?」
 ニーニアが不安げにたずねる。のぞき見ると、ジェイストークがニーニアに笑みを向けているのが見えた。
「いえ、ひどくはないですよ。まだ数日ですから、完治してはいませんが」
「お見舞いはできないの?」
「申し訳ありませんが、しばらくはお会いになれません。陛下はレイクス様の安全のためにも、一年は幽閉を解かないとおっしゃっていますので」
 そう、とニーニアの寂しげな返事が聞こえた。なんとか気を紛らわせようとするテグゼルの声が、何を話しているのか聞こえない程に小さくなっていく。
 今回のように、先に食料や人員を送り込むなどの準備ができないため、幽閉されている間は手を出せそうにない。
 しかし、幽閉の期間が一年ということは、巫女の拉致を終えてからと考えているのだろう。成婚の儀の後ならば、シェイド神との和解も期待できると思っているに違いない。
 降臨を解いてしまえば、フォースの戦士としての契約も消え、必要以上に怖れることもないし、楽に始末できるようになるのだから大歓迎だ。

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